(特別養護老人ホームにおけるたんの吸引について)

 

 

【質問】

 

 特別養護老人ホームにおけるたんの吸引等及びインシュリン注射の現状について、お尋ねします。

 始めに、特別養護老人ホームにおけるたんの吸引等についてです。

 たんの吸引と胃ろうによる経管栄養は医行為であり、これまでは医師や医師の指示を受けた看護師にしか認められていなかったものが、厚生労働省は、この4月1日付けで、一定の条件を満たせば、特別養護老人ホームで介護職員が看護職員と連携して口腔内のたんの吸引と胃ろうによる経管栄養の一部を実施することを認めるに至った経緯についてお尋ねします。

 

 

 

〈答弁〉

 

 近年、特別養護老人ホームにおきましては、高齢化や要介護度の重度化に伴い、医療的ケアを必要とする入所者が増加しています。

 一方、特別養護老人ホームは、医療の提供を主目的とした施設ではないため、看護職員の配置等の医療の提供体制が必ずしも十分ではありません。

 

 このため、たんの吸引、胃ろうによる経管栄養を必要とする要介護者の入所が難しいといった状況もございます。

 

 こうしたことから、厚生労働省におきましては、平成21年2月から「特別養護老人ホームにおける看護職員と介護職員の連携によるケアの在り方に関する検討会」を開催し、特別養護老人ホームにおける医療的ケアの在り方を検討してきたところです。

 

 平成22年3月には、この検討会が「報告書」を取りまとめました。

 この報告書では、今後も口腔内のたんの吸引等が必要な高齢者が増加する中で、介護職員のたんの吸引等の実施は、医療関係者との連携・協力により、医療安全が確保されるような「一定の条件」のもとではやむを得ないものとしたところです。

 

 この報告書を受け、厚生労働省は、今回の通知に至ったものでございます。

 

 

 

【質問】

 

 次に、実施に当たっての一定の条件など、国からの通知の具体的内容はどのようになっているのか、お尋ねします。

 

 

 

〈答弁〉

 

 介護職員が口腔内のたんの吸引等を実施するうえで必要とされる「一定の条件」でございますが、まず、「入所者の同意」が必要になります。また、「医療の安全が確保されること」が必要でありまして、具体的には、「施設に配置されている医師からの承認及び書面による具体的な指示や、看護職員と介護職員との連携・協働といった的確な医学管理がなされていること。」、「看護職員から介護職員に対する必要な知識・技術に関する研修の実施など口腔内のたんの吸引等の水準を確保すること」、「安全確保のため、施設長を中心とした施設内委員会の設置などの体制整備をすること。」などが、その内容となっています。

 

 

 

【質問】

 

 また、実施に向けての今後のスケジュールはどのようになっているのか、県はどのように対応していくのかについて、お尋ねします。

 

 

 

〈答弁〉

 

 実施に当たりましては、「一定の条件」で示されていますように「看護職員から介護職員に対する必要な知識・技術に関する研修」が実施できる体制づくりが重要になってまいります。そのためには、各施設で介護職員を適切に指導できる看護職員の養成が必要になります。

 

 本県におきましては、国の中央研修を受講した看護職員により、各施設で講師となりうる看護職員を養成する研修を秋頃に開催し、各施設で看護職員が介護職員への伝達研修を行えるような体制づくりを支援してまいります。

 

 こうした取り組みにより、施設によっては、早ければ年内には介護職員によるたんの吸引等の実施が可能になる体制が整備されるものと考えています。

 

 

 

 

 

(特別養護老人ホームにおけるインシュリン注射の現状について)

 

 

【質問】

 

 次は、特別養護老人ホームにおけるインシュリン注射の現状についてです。

 たんの吸引等と同様に医療行為であるインシュリン注射を必要とする糖尿病患者も特別養護老人ホームに入所している場合があると思いますが、特別養護老人ホームでは、インシュリン注射についてどのように対応しているのか、お尋ねします。

 

 

 

〈答弁〉

 

 施設におきまして、インシュリン注射が必要な糖尿病患者につきましては、嘱託医の指示に基づき入所者の体調を管理しながら施設の看護師により注射が行われております。症状により対応は異なりますが、一般的には、一日の血糖値をコントロールするということもあり朝食前に注射を行うことが多いと聞いております。

 

 

 

 

【質問】

 

 最後に、たんの吸引等と同様、介護職員によるインシュリン注射の実施について、国の検討状況は、どのようになっているのかについて、お尋ねします。

 

 

 

〈答弁〉

 

 施設の看護職員で対応できるものとして介護職員によるインシュリン注射の実施につきまして、現在のところ、国におきましては、検討は行っていないと聞いております。

 

 

平成2241日付け医政局長通知

医政発040117

  

 

 

特別養護老人ホームにおけるたんの吸引等の取扱いについて(抜粋)

 

 

T 口腔内のたんの吸引等の標準的手順と、医師・看護職員・介護職員との役割分担

 

1 口腔内のたんの吸引

 

標準的な手順

@入所者について、入所時及び状態が変化した時点において、

 (@)口腔内のたんの吸引を、看護職員(※1のみで実施すべきか、看護職員と介護職員とで協働して実施できるか、

 (A)当該入所者について口腔内のたんの吸引を実施する介護職員について、看護職員との連携の下、配置医が承認する。

A毎朝又は当該日の第1回目の吸引実施時において、看護職員は、入所者の口腔内及び全身の状態を観察し、看護職員と介護職員の協働による実施が可能かどうか等を確認する。

B当該日の第2回目以降の実施については、@で承認された介護職員は、口腔内を観察した後、たんの吸引を実施するとともに、実施後に入所者の状態を観察する。吸引実施時には、以下の点に留意する。

 

 ・深く入り過ぎないようにあらかじめチューブを挿入する長さを決めておく。

 ・適切な吸引圧で、吸引チューブを不潔にしないように、吸引する。

 ・吸引時間が長くならないようにするとともに、続けて吸引を実施する場合には、間隔を空けて実施する。

 

 

2 胃ろうによる経管栄養

 

(1)標準的な手順

@入所者について、入所時及び状態が変化した時点において、

 (@)胃ろうによる経管栄養を、看護職員のみで実施すべきか、看護職員と介護職員とで協働して実施できるか、

 (A)当該入所者について胃ろうによる経管栄養を実施する介護職員について、看護職員との連携の下、配置医が承認する。

A毎朝又は当該日の第1回目の実施時において、看護職員は、胃ろうの状態(び爛や肉芽や胃の状態など)を観察し、看護職員と介護職員の協働による実施が可能かどうか等を確認する。

B看護職員は、チューブ等を胃ろうに接続し、注入を開始する。

C介護職員は、楽な体位を保持できるように姿勢の介助や見守りを行う。

D介護職員は、注入終了後、微温湯を注入し、チューブ内の栄養を流し込むとともに、食後しばらく対象入所者の状態を観察する。

(2)介護職員と看護職員との役割分担

@胃ろうの状態に問題のないことの確認

A栄養チューブ等と胃ろうとの接続、

B注入開始(注入速度の設定及び開始時における胃腸の調子の確認を含む。)は看護職員が行うことが適当である。

 

 

 

 

U 介護職員が口腔内のたんの吸引等を実施する上で必要であると考えられる条件

 

 

1 入所者の同意

@入所者(入所者に同意する能力がない場合にはその家族等)が、口腔内のたんの吸引等の実施について特別養護老人ホームに依頼し、当該施設の組織的対応について施設長から説明を受け、それを理解した上で、当該施設の介護職員が当該行為を行うことについて書面により同意していること。

 

 

 

2 医療関係者による的確な医学管理

A配置医から看護職員に対し、書面による必要な指示があること。

B看護職員の指示の下、看護職員と介護職員が連携・協働して実施を進めること。

C配置医、看護職員及び介護職員の参加の下、口腔内のたんの吸引等が必要な入所者ごとに、個別具体的な計画が整備されていること。

 

 

 

3 口腔内のたんの吸引等の水準の確保

D施設内で看護師が研修・指導を行う等により、看護職員及び実施に当たる介護職員が必要な知識・技術に関する研修を受けていること。(※2

E口腔内のたんの吸引等については、承認された介護職員が承認された行為について行うこと。

F当該入所者に関する口腔内のたんの吸引等について、配置医、看護職員及び介護職員の参加の下、技術の手順書が整備されていること。

 

 

 

4 施設における体制整備

G施設長が最終的な責任を持って安全の確保のための体制の整備を行うため、施設長の統括の下で、関係者からなる施設内委員会が設置されていること。

H看護職員が適正に配置され、入所者に対する個別の口腔内のたんの吸引等に関与するだけでなく、看護師による介護職員への施設内研修・技術指導など、施設内の体制整備に看護職員が関与することが確保されていること。

I実施に当たっては、非医療関係者である介護職員が口腔内のたんの吸引等を行うことにかんがみ、施設長は介護職員の希望等を踏まえるなど十分な理解を得るようにすること。

J入所者の健康状態について、施設長、配置医、主治医(別途主治医がいる場合に限る。)、看護職員、介護職員等が情報交換を行い、連携を図れる体制の整備がなされていること。同時にそれぞれの責任分担が明確化されていること。

K特別養護老人ホームにおいて行われる口腔内のたんの吸引等に関し、一般的な技術の手順書が整備され、適宜更新されていること。

L指示書や指導助言の記録、実施の記録が作成され、適切に管理・保管されていること。

Mヒヤリハット事例の蓄積・分析など、施設長、配置医、看護職員、介護職員等の参加の下で、定期的な実施体制の評価、検証を行うこと。

N緊急時の対応の手順があらかじめ定められ、その訓練が定期的になされているとともに、夜間をはじめ緊急時に配置医・看護職員との連絡体制が構築されていること。

O施設内感染の予防等、安全・衛生面の管理に十分留意すること。

 

 

 

5 地域における体制整備

P医療機関、保健所、消防署等、地域の関係機関との日頃からの連絡支援体制が整備されていること。

(※1)特別養護老人ホームにおける業務にかんがみ、特別養護老人ホームでの高齢者の看護に経験を有する看護師が配置されていることが望ましい。(介護老人保健施設その他の高齢者施設、訪問看護事業所又は医療機関も含め、高齢者の看護に十分な知識・経験のある保健師、助産師、看護師及び准看護師を含む。)

(※2)介護職員に対する研修については、介護職員の経験等も考慮して柔軟に行って差し支えないものの、モデル事業においては、12時間の研修を受けた看護師が、施設内で14時間の研修を行ったところであり、入所者の安全を図るため、原則として同等の知識・技能に関する研修であることが必要である。