【手術用ロボット「ダ・ヴィンチ」の県立病院への導入について】
筒井委員
手術支援用ロボット「ダ・ヴィンチ」は、愛知県内ではどのような整備状況か。
病院事業庁
9月末現在、全国で68台が整備されておりまして、そのうち県内には6病院に6台が整備されております。さらに、本年度には、県内には、名古屋第二赤十字病院と瀬戸市の公立陶生病院にも整備される予定であると聞いております。
筒井委員
切らなくてがんを直すということはいいことで、手術をしてもらう方からすれば有難い話だが、いろんな事例を聞く。これもテレビ等でやっていることだが、うまくいかなかったという話もある。治療で有名なのは、藤田学園ということも聞く。愛知県には、がんセンターがあり、
持っていても不思議はないと思うが、どのように考えているのか。
病院事業庁
がんセンター中央病院の現場には、ダ・ヴィンチを整備したいという希望はあります。傷が小さいという患者さんにとってはメリットがあることは間違いありません。通常の開腹手術では、骨盤の中の視野が悪いため、お腹の中の手術は非常にやりにくいです。また、直腸
の肛門のあたりは視野が狭い為、前立腺の手術もやりにくいです。この機器は、視野を広く取れるというメリットがあります。
その他にも腹腔鏡を使った手術もありますが、それを使ってもやりにくい手術ができるメリットがあります。この機器の一番の問題は、3億円と非常に高価であるために、現在、平成24年度の診療報酬改定で、保険診療で認められているのは前立腺がんの手術のみ
で、がんセンターでの費用対効果を見てみると、3億円の機器に加え、その他にも高額な周辺機器を使用する必要があり、非常に設備投資を要します。
診療報酬は決まった金額でありますので、年間で最低200例以上の手術を必要とします。
現在の愛知県がんセンターにおける前立腺がん手術件数は年間で40〜50件の間ですので、現在の診療報酬でダ・ヴィンチを使って行うと、経営的に見ると持ち出しばかりになってしまいます。
現在、名古屋大学とか藤田保健衛生大学でもダ・ヴィンチを使っておりますが、年間60〜70件です。一つは研究目的ということもあります。そういったことから、愛知県がんセンターでやろうとは思っておりません。
将来は、他にも保険適用が増えてくると思いますので、その時に検討してまいりたいと思います。外国の状況、特にこの5,6年間、韓国では、私立の病院に大量に導入されている所があります。
1大学病院に3〜4台入っている病院もあります。このような状況になると、適用のある患者に適正に使えばいいが、適用のない患者に使ったりして問題となっております。費用対効果の問題もあるので、慎重に考えてまいりたいと思います。
筒井委員 :将来的には診療報酬が、前立腺がん以外にも認められるのであれば、検討していただけるということだと思う。NHKで放送されていた話を聞いて、中部地区の医療は進んでいると感じたが、今の話で、経営上、非常に厳しいということもわかった。その中で、今後整備される第二日赤と陶生病院も含めて8箇所の病院との連携はどのように考えているか。
病院事業庁 :ダ・ヴィンチを使った連携ということでは、既に患者の実例はありまして、患者の希望があれば、積極的に紹介しております。
【県立病院における准看護師の就業状況等について】
筒井委員
准看護師の養成数が、ピーク時に比べて、相当数減少していることは、理解した。
では、県立病院の状況はどうなっているのか。
私は、以前から、県立病院は、がん医療、精神科医療、小児医療などの高度で専門的な医療を提供することが求められていることから、医師だけでなく看護師や薬剤師などの医療技術者も、高いレベルの技術や知識を持った者を配置する必要があるとの意見を再三、申し上げてきた。
現在、県立病院においては、准看護師は何人働いていて、給与は看護師と違いがあるのか。また、准看護師の採用についてどのように考えているのか。
病院事業庁
県立病院における准看護師の就業状況と給与についてのお尋ねでありますが、現在、病院事業庁の准看護師は、城山病院に勤務する4名のみでありまして、がんセンター中央病院など他の県立病院では勤務しておりません。
また、看護師と准看護師の給与でございますが、免許の取得に際し、必要な学歴が異なりますことから、その面で、初任給に差を設けているところであります。
次に、県立病院における准看護師の採用についてでありますが、病院事業庁では、平成18年4月の採用から、看護師のみを対象とした選考試験を実施しており、准看護師を募集しておりません。
理由といたしましては、県立病院に求められています、高度・専門医療の実施及び安心・安全でより良質な医療を提供するとの役割を踏まえますと、准看護師よりも教育期間が長い看護師の配置が望ましく、さらに研修を重ねて、認定看護師、専門看護師を育成・配置することが必要であると考えておりますことから、このような受験資格としたところでございます。
【がんセンター研究所の大腸がん関係の研究成果及び広報について】
筒井委員
さる5月、血液中に含まれる免疫細胞の変化を捉えて早期の消化器がんの有無を判定することができるという新しい検査方法を、金沢大学附属病院が開発したと新聞で報道されていた。
また、最近では、NHKのテレビで、先程のダ・ヴィンチと金沢大学の研究について放送されていたのを感心して見ていた。
そうした中、愛知県のがんセンターでも、9月20日の新聞で、研究成果が、「大腸がんリスクを血液検査で予測」と大きな見出しで報道され、大変注目をした。
報道によると、その内容は、がんセンターを受診した大腸がんの患者さんと、がんではない方の白血球の遺伝子を比較したところ、大腸がんの発症に関係する遺伝子変異を多く持つ人ほど、大腸がんの患者が多かったということで、大腸がんになりやすい体質かどうか、血液中の遺伝子の変異を調べて予測するというものであった。
今回のがんセンター研究所の研究成果は、将来どのような形で活用されることになるか伺う。
また、このように研究所において行われている研究成果は、最終的には臨床に繋げることが重要と思うが、この点についてどう考えか。
病院事業庁
大腸がんは、近年、日本で患者数が急上昇しているがんで、特に女性の大腸がんの患者さんが増えておりまして、米国の勢いを抜いてしまいました。
いずれにしても男女とも、2番目に多いがんで、効果的な予防対策が必要となります。
将来、遺伝子解析が迅速・安価にできるようになれば、この研究成果がきっかけとなって、大腸がんになりやすい方を識別することができ、ハイリスクの方を選別できるので、生活習慣病の対策にも役立つと考えられます。
このような、個人の遺伝的体質をもとにして大腸がんの予防も可能となりますし、早期発見にもつながると考えております。
がんセンターの中では、研究を臨床現場にいかに役立てるかが大切であるので、特に去年頃から中央病院と研究所との有機的なつながりを強化しまして、研究成果が臨床に応用できるように体制を作り直そうと組織の改編を行っているところであります。
また、中央病院には2年間のレジデント研修と、レジデント終了後2年間のシニアレジデントがあります。
シニアレジデント希望者には、2年間のうち1年間は研究所において研究に集中する。臨床的な考えを持っている人が研究をすれば、臨床にフィードバックできるといった体制を作り上げております。
今年のレジデントの募集では、予想以上にたくさん集まっておりますが、既に情報提供しておりますので、この体制を気に入っていただければ、シニアレジデントとして残って研究に1年間、没頭していただきたいと考えております。
筒井委員
こういったことは大変重要だと思う。しかしながら、こういった重要な人をお迎えして、研究に打ち込めるだけの施設、宿舎がない。
不十分である。看護宿舎も同じである。早急に、なんとか庁長在任中にお願いしたい。
いつもがんセンター研究所の方と交流すると、すばらしい研究をしており、海外へも様々な国へ出向いて発表をしているということを感じる。
愛知県がんセンター研究所のレベルの高さを認識するが、こういったことを愛知県も県民も深く理解していないのではないかと思う。いろんな学会の発表などを見ると、やはりすごいことを知る。
がんセンター研究所の内容、成果をもっと県民に知ってもらうことが必要だと思う。そのためには、研究内容が素人にわかるような広報に取り組んでもらいたい。特に今回のがん対策推進条例に、研究も重視していくこと、財政的な措置をしていくことが含まれている。今後、効果的に広報をするため、どのように取り組んでいこうとしているのか。
病院事業庁
広報等について、まずこれまでの取り組みについてお答えします。
毎年、9月になりますと、がん征圧月間ということで、恒例の行事がありまして、特にPR事業が活発になります。各新聞社の後援を得て、企画記事を大々的に載せて、がんセンターの紹介をしていただいております。
その一環事業として、公開講座の開催、研究成果のパネル展示、研究所内を案内する公開ツアー、高校生の体験学習も行っております。
今年度は、合わせて500人を超える方々に参加をいただきました。
さらに、最近は、海外の一流の研究雑誌に載った論文に関しましては、マスコミに公表するようにしております。インターネットを通じた情報発信も積極的に行っており、今年度、病院も研究所もホームページを全面的にリニューアルし、良くなったと思っております。
これらを通して、研究内容を発信できるようになっております。特に、研究所は、外国からのアプローチに対応するようになっております。
今後の取り組みについてでありますが、一般の県民の方々に、がん研究やその成果についての情報を伝えていくためには、報道機関の協力が極めて必要でありますので、この9月3日、報道機関の記者を研究所に招き、「記者サロン」という新しい言葉を使いまして、研究所の研究内容、基礎研究から臨床研究まで全般にわたって情報交換をし、そのうちの一部を報道機関の方から情報発信していくという取組を始めました。
今後も定期的に開催してまいります。
これは、情報発信の方法としては非常によいものだと思っております。
筒井委員
研究所は、がん月間とかのイベントの際には、頻繁に新聞などに載せていただける。
それはありがたいことだが、病院も信頼の輪を大きくするためには、医者自身が、がんセンターには研究所があって、海外からのデータも多く、研究もしており、臨床に役立っていることを患者に伝えることで広報してくれたらいい。
ダ・ヴィンチがなくても、もっと大切な最新の医療のデータ、研究などがあることを医師自身が広報すれば、愛知県がんセンターの評判はもっとよくなる。拠点病院だとかいいながら、役所的な病院という印象がある。
病院事業庁
大変、大切なご指摘をいただきました。研究所の研究アクティビティは非常に高い。
科学研究費の取得状況も大変すばらしい。発表している論文も多い。国立がん研究センターはたくさんの研究者がいて、愛知県がんセンター研究所は少ないが、一人当たりの論文発表数は、国立がん研究センターよりもはるかに多い。
そういう研究のアクティビティは高いが、研究成果が中央病院、愛知病院の臨床現場に役立っているかというと今一歩であります。
このことを私が指摘し、研究所長と話し合ってきました。
研究所の人達は、研究だけやって臨床の考え方が少ないのではないかと感じまして、2年前、研究所の人々全員と話し合いまして、研究成果が臨床に役立つように研究の方向を変えてくださいとお願いをしました。
成果の一つが、レジデントで、臨床をやっている人に研究所へ来てもらって臨床の目で研究をしていただくことを始めました。国立がん研究センターと同じ手法ではありますが、今年から始まった第一歩であります。
研究所の誰々と病院の誰々とで組んで研究をしていくようなシステムはできあがっておりますので、これからと思っております。
筒井委員
大いに期待している。