(平成2838日)

2月県議会の本会議質問

(議案質疑) :あいち航空ミュージアム(仮称)整備費について

筒井 タカヤ議員

私からは、第3款 振興費 第1項 振興総務費のうち、あいち航空ミュージアム(仮称)整備費について、お尋ねいたします。

 

本県は、平成2312月、「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」の指定を受け、「航空宇宙産業」の育成・振興のため、様々な支援に取り組んでおります。

 

その中核プロジェクトとして、県営名古屋空港周辺地域では、国産初のジェット旅客機MRJの開発・生産が進められており、昨年1111日には、初飛行が成功し、国内外から大きく注目を集めたところであります。

 

 

また、三菱重工は、空港隣接地において、MRJの量産工場の建設を進めており、量産に向けた準備を着実に進められていると伺っております。

この工場で生産が本格的に始まると、県営名古屋空港には、完成した量産機が並び出すこととなり、多くの見学者がここを訪れることが予想されます。

 

そのため、本県では、その見学者の受入体制を整え、この地域の活性化を図るため、昨年の5月臨時議会において、受入拠点施設の実施設計費等が提案され、現在、平成29年秋頃のオープンを目指し、航空機をテーマとした「あいち航空ミュージアム(仮称)」の建設計画が進められているところであります。

 

 

私は、日本の航空機産業の歴史に様々な実績を残し、将来にわたって高いポテンシャルを有するこの地域において、このミュージアムが、航空機産業の情報を発信していく拠点のみならず、航空機分野の新たな産業観光の拠点として、大きな役割を担っていくことに、大変期待をしているところであります。

 

 

また、将来、航空機産業で活躍する人材を育成していくためには、このミュージアムに、日本の若者、特に次代を担う小中高生たちに全国からたくさん来ていただき、航空機産業の面白さを学んでいただけるよう、学校の社会科教育の場として、入りやすく学びやすい施設であるべきと考えております。

 

 

一例ではありますが、平成27年4月に開園した「あいち健康の森薬草園」は、あいち航空ミュージアムの整備と同様に、本県が整備した施設の一つであります。

 

この薬草園は、薬草の活用を通じて心とからだの健康づくりに対する意識の向上を図ることを目的に、薬や食について学ぶことができ、子どもから高齢者まで誰もが楽しめる憩いの場として計画されました。

 

薬草園の園内には、薬草やハーブの植栽展示に加え、栽培等の体験を通じて、薬草の育て方や活用方法を学ぶ体験薬草農園、薬用植物に関する講座などを行う研修展示施設がありますが、このように充実した施設を有しているにもかかわらず、入園料については無料であります。

 

園内の施設の管理運営については、当然コストがかかっておりますが、指定管理者である愛知県薬剤師会・日誠グループに対する指定管理料として、本県が負担しているわけであります。

 

 

「あいち航空ミュージアム」の管理運営については、薬草園と同じく指定管理制度を活用する予定であるとのことでありますが、利用料金制を導入した場合、年間の来場者が想定どおり来なければ、採算性の確保は極めて困難であると思われます。

 

年間目標来場者数35万人を達成するため、現在、検討中と伺っておりますが、展示コンテンツの充実、魅力的なイベント開催など、相当な工夫が必要だと思います。

 

現在のあいち航空ミュージアム計画なるものを見ていると、まるで三菱重工が作り出した航空機の歴史の展示場を県がそっくり肩代わりして、県民の税金を支出するとの批判の声が出そうです。

 

例えば、MRJのような三菱重工が製造した機体だけでなく、ライト兄弟より120年も前に、空を飛んだとされる鳥人「浮田幸吉」や、飛行機の原理を発見し、日本の航空機の父、飛行機の真の発明者と言われる「二宮忠八」が作り出した飛行機を再現するなど、日本の航空史を幅広く学べるような展示にする必要があると思います。

 

 

また、県の計画では、入場料収入で運営していくこととありますが、学校の社会科見学で訪れることが多い工場見学の施設では、一般的に入場無料で運営されていると聞きます。

 

現計画では、入場料は大人1,000円、子供500円、就学前無料、小中学生の社会見学300円です。

 

また、学校行事の場合、例えば、トヨタ産業技術記念館では、入館料が中高生は半額、小学生は無料、名古屋市科学館では、高校生は半額、小中学生は無料となるなどの措置がされております。

 

なお、高校の修学旅行に関して言えば、一昔前は、体験学習の一環としてスキー旅行が一般的でしたが、今では、産業や社会、文化の理解を深めるため、産業観光施設などを目的地とする修学旅行も増えてきております。

 

私は、このミュージアムが、日本を代表する社会科見学や修学旅行の受入先として、日本を代表する産業立県である愛知の魅力を伝えるという大きな役割が期待できると信じております。

 

もし高校生が有料で、1,000円の入場料となれば、このミュージアムは、高校の修学旅行では使われなくなり、修学旅行生は、MRJ量産工場の見学コースにのみ訪れ、県ミュージアムを横目に、そのままバスが、続々とUターンをして帰る光景を想像をするだけでも、何のために税金を投入してまで作ったんだとの想いがします。

 

 

これでは年間目標来場者数35万人には遠く及ばないと思います。

 

さらに言えば、このミュージアムが、日本で最先端の航空機産業を学べる施設として、中国や台湾、韓国、東南アジアなど、世界中の人々が研修に訪れていただけるようになってもらいたいと考えます。

 

私は、このミュージアムが、本県の産業振興に繋がる人材育成の場のみならず、学校の社会科見学の場、全国からの修学旅行の受入の場、世界中から訪れる航空機産業の研修の場として、多くの方に安定的に来場していただくためには、小中高生の入場料は原則無料、支払っていただくにしても、300円以下にすべきであり、海外からの来訪者についても、団体割引等により、小中高生と同程度の入場料にすべきであると考えます。

 

私共、県会議員に対し、事前に配布された説明資料には、団体割引がありませんので、是非とも団体割引は実施するよう検討ください。

それこそが世界中の観光客を迎え入れしようとする姿勢ではないかと考えます。

 

 

このように、小中高生を無料にした上で、ミュージアムを安定的に運営するためには、減少する入場料収入分を負担する必要が生じるかもしれません。本県がコストを負担する仕組みだけではなく、関連企業との連携や支援の仕組みも不可欠ではないでしょうか。

 

シアトル航空博物館などの海外の航空博物館では、航空機関連企業が金銭的支援や機体の寄贈など、様々な形で協力していると伺っております。

 

県内にある他の産業観光施設に目を向けますと、自動車であれば、長久手市にある「トヨタ博物館」、鉄道であれば、同じく名古屋市にある「リニア・鉄道館」が点在しておりますが、これらの産業博物館では、全て企業が独自に整備し、企業PRも含めて運営しております。

 

MRJを開発・生産する三菱重工においても、量産工場内に見学コースを整備し、オープンさせる予定と伺っておりますが、あいち航空ミュージアムが他の産業観光施設のように企業が整備するのではなく、この地域の航空機産業の振興や人材育成に寄与していくため、行政が整備するという目的を踏まえると、例えば、このミュージアムの運営に係る維持管理費用は、三菱重工を始めとしたこの地域の航空機関連企業に援助いただくなど、関連企業に対し、様々な形で協力を求めていく必要があるのではないかと考えます。

 

 

そこでお尋ねいたします。

 

このミュージアムの収支計画については、現在、検討されていることと思いますが、将来の航空機産業を担っていく小中高生について、入場料は無料、最悪でも300円までとする考えはないのでしょうか、お伺いします。

 

小中学校の課外学習・修学旅行を企画される学校関係者・バス旅行会社・PTAの人々の意見を聴取すると、無料もしくは出しても300円までの声が多くありました。

考えてみれば、工場見学といえば、そのほとんどが無料である中、県の計画では、たかだか飛行機3機が展示だけのこと、高い料金を支払うなら、あえて県の航空ミュージアムには行きませんとの声の方が圧倒的に多かったです。

 

次に、ミュージアムの設置及び運営にあたっては、その維持管理費用分ぐらいを、三菱重工業()を始め航空機産業に関連する企業に対し、求めていくべきであると考えますが、答弁を求めます。

もし、協力いただけるとなれば、入場料も値下げが出来るはずです。

 

 

 

 

振興部長

(答弁)

 

あいち航空ミュージアム(仮称)の小中高生の入場料の考え方についてお答えいたします。

 

このミュージアムは、「航空機産業の情報発信」、「次代の航空機産業を担う人材育成」、「航空機をテーマとした産業観光の拠点づくり」という3つのコンセプトに沿って整備を進めております。

 

展示コンテンツについては、各分野で活躍されている有識者を委員とした検討会を設置し、ミュージアムのコンセプトに基づき、次代のものづくりを担う子供たちが、たくさん来場し、航空機産業を楽しく学んでいただけるよう、小中高生を主なターゲット層として、現在、検討しているところであります。

 

 

特に、小中学生の社会科見学の訪問先として、この施設を幅広く活用していただきたいと考え、当初お示しいたしました収支採算の見込みでは、入場料を大人1,000円、子供500円、未就学児無料、さらに小中学生の社会科見学の利用を300円と想定し、年間35万人の入場者がある場合、収支均衡するとしていたものです。

 

なお、三菱重工からは、MRJ量産工場の見学コースについて、有料とするかどうかを含め、その内容を検討していると伺っております。

 

今後、入場料の設定にあたっては、将来の人材育成、教育的観点を踏まえ、小中高生の社会科見学での入場料割引制度や団体割引制度の導入、さらには、MRJ工場見学コースの検討状況や施設の収支採算を考慮の上、類似施設の取扱いも参考にしながら、整理してまいりたいと考えております。

 

 

次に、あいち航空ミュージアム(仮称)の運営における関連企業からの支援についてお答えいたします。

 

このミュージアムは、情報発信や人材育成の面で、当地域の航空機産業の発展に寄与するものであることから、幅広い支援を求めていきたいと考えております。

 

ミュージアムへの展示機体については、3機と限定しているものではなく、現在、航空機メーカーや博物館等から、色々と提案をいただいており、展示機体の入手方法も含めて、相談をしながら調整を進めているところであります。

 

 また、展示する航空機の定期的な整備にも、専門的な知識・経験を有した人材が必要であり、さらに、実機以外のコンテンツの製作に当たっても、航空機産業をリアルに表現する必要があり、こうした点においても協力を求めていきたいと考えております。

 

本県としましては、今後とも、この地域の航空機関連企業と連携し、様々な形でご協力が得られるよう、引き続き、協議を行いながら、安定的な運営手法の検討に取り組んでまいりたいと考えております。