平成28年9月議会 建設委員会 H28・10.6
県営住宅に関する問題についていくつか質問をいたします。
(質問1)筒井 タカヤ議員
今回は、県営住宅の管理上問題となる家財道具等の残置物の取り扱いについて伺います。
9月23日の中日新聞朝刊の一面に、
「公営住宅 増える孤独死」
「遺品放置 部屋貸せず」
との見出しの記事が掲載されたことは皆さんもご承知のとおりであります。
この新聞報道がなされる2週間ほど前に、私は県住宅管理室長に面談をし、高齢単身者が死亡された後、残置物の撤去等の取扱いが全国でも発生しているようであるため、9月の委員会において質疑を行う旨を通知した案件でもあります。
内容を簡単に申し上げますと、
「公営住宅では高齢の単身入居者が増えており、単身高齢者が死亡した後、身寄りがなかったり、引き取りを拒まれたりするため、家財道具などの遺品が相続人に引き取られず、長期にわたって入居者募集が停止になる部屋が出ている。」
「公営住宅を管理する自治体では、相続人全員の同意を得ることなく一部の相続人の委任で処分をしたり、事前に家財道具を引き取る代理人を選任したり、部屋から遺品を移動させ、別の場所で保管するなど、様々な対応をとっているものの決め手がなく苦慮している。」
「そこで、国土交通省は本年8月に、全国の自治体に家財道具が残った場合の対応を聞くアンケートを行い、集計を集めており、実態を把握した上で処分の指針を示すかどうか検討する。」
という内容でありました。
私は、過去の県議会において県営住宅入居者の高齢化の問題について幾度も質問し、あらゆる角度から対応を急ぐよう県当局の姿勢を正してきたところでありますが、この新聞記事を見て、私がこれまで主張してきたことが、現実の問題として顕在化してきたことを確信しているところであります。
そこで、最初の質問でありますが、県営住宅における単身の入居者数と、そのうちで65歳以上の高齢者の方はどれだけいるのか。
また、単身の入居者の方がお亡くなりになって県営住宅を退去される数、そして誰にも看取られず、住宅内で死亡し、死亡後に発見される「孤独死」の発生件数についてどれだけあるのか、答弁を求めます。
(県営住宅管理室主幹 答弁要旨)
平成27年度の数値でございますが、県営住宅の入居戸数48,800戸のうち、11,800戸程が単身入居者となっております。
このうち、約70%の8,200戸程が65歳以上の方でございます。
次に、死亡により退去された単身入居者は、平成27年度は123名でございました。
そして、単身の入居者が誰にも看取られること無く、県営住宅の住戸内で死亡し、その後発見された、いわゆる「孤独死」は、24件発生しております。
(質問2)筒井 タカヤ議員
県営住宅は、従前より低所得者世帯に対する住宅として供給されてきました。
我が国の高度経済成長時代には、「新婚時代の小さなアパートを振り出しに、子供が生まれて少し広めの賃貸住宅に住み替え、やがて分譲マンションを買い、最後にそれを売却して庭付き一戸建てを手に入れてアガリ」という「住宅すごろく」が理想の住み替えパターンと言われてまいりました。
県営住宅も、この「住宅すごろく」のスタート近くに位置づけられ、役割をしっかり果たしてきたと私は確信しております。
しかし今日、経済停滞の時代、超高齢社会の到来を迎え、老後破綻や高齢者の生活保護受給の増加など、高齢者に関する非常にショッキングなニュースが目につきます。
昨今、高齢夫婦が住み慣れた自宅を手放し、県営住宅に入居したいという方も多く、これまで一般に典型的と信じられてきた住宅の住み替えパターンは完全に崩壊し他と思います。
今や、県営住宅は、低所得の高齢者の終の棲家として、人生の最後を迎える場となってきたのであります。
最初は家族で生活していた入居者が、子供が成長し、一人また一人と家族が県営住宅から離れ、配偶者にも先立たれ、結果的に残された高齢者が一人で県営住宅に住んでいるというわけであります。
そこで質問です。孤独死が二十数件発生しているとのことでしたが、単身高齢者の孤独死防止について、どのように取り組んでおられるのか、答弁を求めます。
(県営住宅管理室主幹 答弁要旨)
県営住宅の孤独死防止対策でございますが、まず基本的な対策といたしまして、住宅内に住宅管理業務を補助するための業務所、連絡員を配置しておりますので、日々の補助業務を通じて、入居者の状況把握に努めるとともに、不測の事態に備えた対応の統一化を図っております。
緊急を要する事態には、警察官の立会のもと、住戸内に立ち入ることとしております。
さらに、県内市町村において、電気、水道等のライフライン事業者等で構成される「高齢者等見守りネットワーク」の構築が進められておりますので、こういったネットワークを通じて情報共有が図られるよう、県営住宅管理者として、ネットワークと密接に連携を図っているところでございます。
(質問3)筒井 タカヤ議員
孤独死防止については、市町村でも積極的な取組をしておられます。県営住宅においても関係機関としっかり連携して、今後も対応していただきたいと思います。
一方で、様々な孤独死防止対策を講じても、住宅にお一人で住んでいる以上、孤独死が発生することは致し方ない面もあると思います。
県営住宅で孤独死が発生した場合、その部屋はどのように管理していくのか、答弁を求めます。
(県営住宅管理室主幹 答弁要旨)
孤独死のあった部屋については、入居していた方の親族など関係者に退去手続き等をしていただいております。
孤独死のあった部屋は、事故部屋として扱い、一般の住戸の入居者募集とは区分して、募集案内書に「過去に室内死亡等があった空住戸も募集することがありますので、お問い合わせください」と記載して、別途対応しておるところであります。
(質問4)筒井 タカヤ議員
これは孤独死に限らず、単身の入居者が住宅以外の、例えば病院などで亡くなった場合にも考えられることでありますが、入居者の親族の方がきっちりと退去の手続きを取ってくれればいいのですが、なかには親族との関わりが薄く、手続きを拒否されたり、そもそも身寄りがないような方もいるのではないですかと思います。
このような場合はどうしておられるのか、答弁してください。
(県営住宅管理室主幹 答弁要旨)
単身で入居している方が亡くなった場合、入居者の親族の方に退去手続きを取っていただいておりますが、親族の方がみえない場合や親族との関わりが薄くて、退去手続きに協力していただけない場合につきましては、県営住宅に入居する際に立てていただいた、連帯保証人の方に手続きをお願いしております。
(質問5)筒井 タカヤ議員
親の介護をするために毎日毎日県営住宅に通う親族の方がいる一方で、家族関係が希薄となり、一人で亡くなっていかれる方も大勢おられます。そして、亡くなった後始末もしてもらえない単身の高齢者がいるのも現実です。
公営住宅の単身入居者が死亡した場合、残された家財道具等は遺産分割協議によって最終的に承継者が決まるまでは、相続人の共有物に属することになりますので、本来ならば相続人全員の同意が必要で、相続人が家財の引き取りを行うことが原則であるとされております。
しかし、相続人全員の同意を取ることはなかなか困難でありますし、親族や保証人も退去の書類ぐらいは手続きしても、家財の処分までは手が回らず、放置されてしまうのが現実の問題としてあります。
今の答弁では、県営住宅に単身で入居している方が亡くなった場合、入居者の親族等が退去手続きを行うとのことでありますが、家財についても引き取ってもらっているのでしょうか、答弁を求めます。
(県営住宅管理室主幹 答弁要旨)
単身で入居している方が亡くなった場合には、入居者の親族の方に、退去手続きと合わせて、家財を引き取っていただくこととなっております。
しかしながら、やむを得ず家財の引き取りができない場合には、県に処分を委任される場合がございます。
(質問6)筒井 タカヤ議員
亡くなった方の親族が家財を引き取ることが原則とのことですが、単身で入居されていた方が亡くなった場合、実際にどのくらい親族が家財の処分を行っているのですか。
また、処分されず残っているのはどれくらいありますか。答弁を求めます。
(県営住宅管理室主幹 答弁要旨)
平成27年度におきまして、死亡により退去した単身入居者123名でございますが、そのうち、親族の方に家財を処分していただいたものは、110件となっております。
残り13件につきましては、県に処分の委任がされております。
(質問7)筒井 タカヤ議員
今回の新聞報道では、弁護士が「相続人は家財の所有権だけでなく引き取りの義務を負う。自治体が相続人全員の同意なしに家財を処分すれば所有権の侵害と見なされる恐れがある」とコメントしています。
今の答弁では、概ね亡くなった方の親族が、残された家財を処分しているようですが、家財が放置された部屋も現実にあり、自治体としては新規の入居者を募集する必要があるため、一部の相続人からの委任で自治体が処分せざるを得ないという実態があります。
自治体は、法律と現実の狭間で苦慮しているというわけであります。
そこで、国は、調査の上で指針を示すことを検討しているとのことですが、今後、県はどのように対応していくのか、答弁を求めます。
(県営住宅管理室長 答弁要旨)
これまで主幹が答弁いたしましたように、単身入居者の死亡に伴う退去の際には、家財の引き取りを含めまして、退去手続きを入居者の親族や身寄りのない方については保証人に行っていただいております。
ただし、何らかの事情により家財の引き取りをしていただけなかった場合には、県に処分が委任されることとなります。
しかし、単身入居者が亡くなった時点で、家財道具等は相続財産となり、相続人全員の同意のもとで引き取っていただくことが、より望ましいことも事実でございます。
本県としましては、当面、これまでの方法により対応してまいりますが、現在、国が全国的な状況調査を行い、今後、残置家財の処分のあり方について検討すると聞いておりますので、情報収集に努めてまいります。
(質問8)筒井 タカヤ議員
県営住宅は、この20年間、応能応益家賃制度への転換や、三位一体改革による国庫補助金の税源移譲などにより収入が大幅に減少し、修繕費を減額することで済ましてまいりました。
そのため、定期的に行うべき計画修繕を取りやめるだけでなく、一般の修繕費も大幅に減額してしまい、その結果空家の修繕ができず、放置されたまま空家が増えていくといった悪循環に陥ってきたのであります。
この問題について、私は、過去の県議会で、繰り返し、繰り返し、厳しく指摘し、当局に改善を求めてまいりました。
その結果、やっと数年前から空家修繕費を確保して空家の解消に取り組むようになったのです。
しかし、修繕未完了の空家の解消に努めるのが精一杯で、家財道具が残っている空家については、修繕費が嵩むため後回しになっていたのではないでしょうか。
残置家財のない空家の修繕費はいくらかかるのか、一方で残置家財のある空家の修繕費はいくらかかるのか、答弁を求めます。
(県営住宅管理室主幹 答弁要旨)
残置家財のない一般的な空き家の修繕費は、平均して戸あたり 40万円程度でございます。
一方、残置家財がありますとその処分費が別途必要であり、処分費は残置家財の状況によりますが、平均して戸あたり25万円程度でございますので、合計して65万円ほどの空家修繕費が必要です。
(質問9)筒井 タカヤ議員
県営住宅に入居を希望する方は、依然多くおられます。住宅に家財などが残されれば、当然これを片づけるまで入居者の募集をすることができず、県営住宅への入居を求める方々の入居機会を阻害しているのではないでしょうか。
住宅に困窮する低所得者に対して、低廉な家賃で入居できる住宅を供給することが県営住宅の使命です。
修繕費をしっかりと確保して、通常の空家は当然として、残置家財のある空家を解消することに全力で取り組んでいただきたい。
答弁を求めます。
(県営住宅管理室長 答弁要旨)
家賃収入の減少等により、十分な修繕費が確保できず、空家の修繕に遅れが生じておりましたが、平成25年度から空家修繕費を増額したことにより、修繕の遅れも次第に解消してまいりました。
残置家財のある空家につきましても、家財の処分及び修繕に取り組み、空家の解消に努めているところでございます。
(質問10)筒井 タカヤ議員
これまで担当者の方から答弁をしていただきました。
最後に建築局長から総括して答弁をしてください。
(建築局長 答弁要旨)
今回、単身高齢者の孤独死の問題と残置家財の処理の問題についてご質問をいただきました。
県営住宅で単身の高齢者の方が年々増えてきていることにつきましては、十分認識し問題と感じております。担当の方からも答弁させていただきましたが、市町村の福祉部局又は県の健康福祉部局の方でも包括ケアシステム等を進めております。
そのような福祉部局等ともしっかり連携して対応を進めていきたいと考えております。
また、残置家財の処理につきましては、国において調査を行っており、その処分のあり方についての検討がされておりますので、方針等が示された場合には、それに従って適切に対応していきたいと考えております。
残置家財の処分につきましては、入居を希望される方が多く見込まれる住宅を優先して処理をしていくなど空家修繕費の効果的な執行に努めるとともに、来年度以降の修繕費の確保についてもしっかり取り組んでいきたいと考えております。
(要望)筒井 タカヤ議員
今日、超高齢社会を迎え、県営住宅は低所得の高齢者の終の棲家となりました。
介護も在宅介護が基本となり、県営住宅で人生の最期を迎える高齢者の方々が多数おられます。
先ほど65才以上の高齢単身入居者が8,200名との説明がありましたが、今後は急速に増えてくることは確実であります。
私のところにも、単身の県営住宅入居者の方々から
「子供はいるけど、離れたところに住んでいるし、私が死んだら後始末はちゃんとしてもらえるのだろうか。」
「子供もいないし、親族とも縁が薄くて頼れる人がいない。」
など、自分の死んだ後のことを心配する声が多く寄せられています。
こうした高齢者の方々が、どうか安心して住み続けられるように、終の棲家としての県営住宅はどうあるべきか、しっかり考えて、そして責任を持って管理をしていただくことを要望して、この件については終わります。