平成29年9月
平成29年(9月:県議会)建設常任委員会
〈議事録〉 筒井 タカヤ
質問 筒井タカヤ議員
衆議院が解散され、日本の進路はかくあるべきと訴える各政党が懸命に選挙戦を闘っています。
その中でもとりわけ野党陣営は、今回の選挙は問題となったいわゆる「森友学園」・「加計学園」の疑念隠しだと主張をしていることは、国民の中でも同様に考えている人も少なくはないと思います。
この2件は何が問題なのかをたどると、国が許可・認可発注をする過程で、ある種の一部事業者に特別の配慮がなされていたのではないかと推察出来る疑念を明確に解消することが出来なかったことが未だに続いていることによるものです。
即ち一部の事業者への「利」はありませんでしたとなれば疑念は解消されます。
私が当建設委員会において建設部の発注方式の内、愛知県の価格据置総合評価方式には、一部特定の事業者(企業)に有利となっている点があるから改善をしていただけないかと、3回もの質問を行いました。
今、何のために何が求められ、また何を求めなければならないのか?
それでは以下数点お尋ねします。
質問の@
・公共調達は国民・県民の「税金」を投入した「一般競争入札」が原点であることを考慮すれば、より「競争性」及び「透明性」の確保が必要であるべきです。
これが大前提であると考えますが、県当局の見解を求めます。
【答弁要旨(建設企画課)】
○ 公共工事に係る入札方式は、地方自治法などでも「一般競争入札」を原則としており、委員ご指摘の「競争性」の確保、また、昨今の行政運営の原則である「透明性」の確保についても、大変重要であると考えている。
○ 但し、行き過ぎた価格競争が、手抜き工事や下請け業者へのしわ寄せ等により、公共工事の品質低下を招くことがないよう、一般競争入札において、「価格」と「品質」を総合的に評価する総合評価落札方式を適用し、さらに低入札対策の強化策として、価格据置型を導入したところである。
質問 筒井タカヤ議員
質問のA
・受注者に偏りを生じさせるような価格据置型総合評価方式の制度を、平成28年度から急に採用した理由は何だったのでしょう。
私が思うのは、「森友、加計学園」のような県組織の最上部の意向の忖度があったのではないかと疑念を抱いてしまいます。
(答弁を求めます。)
【答弁要旨(建設企画課)】
○ 平成26年度に「品確法」が一部改正され、公共事業の施工者が、将来にわたり担い手を育成・確保するために必要となる適正な利潤を確保できるよう必要な措置を講ずることが発注者の責務とされたことを受け、本県としても、「過度な価格競争」いわゆる「ダンピング」を防止するため、平成26年度からまずはWTO対象工事において、価格据置型総合評価落札方式を導入し、低入札対策の強化を図ったところである。
○ さらに、平成28年度からは、この方式の対象を一部工事を除く総合評価落札方式一般競争入札に拡大し、ダンピングを防止し、価格と品質が総合的に優れた内容の契約を行い、公共工事が適切に執行されることで、将来にわたる品質確保が、これまで以上に期待できることとしたものである。
質問 筒井タカヤ議員
質問のB
・この価格据置型総合評価に対する底辺の声に対して、一切何ら見直すこともなくこの方式・手法に拘るのは何故か、理由を知りたいのです。
(答弁を求めます。)
【答弁要旨(建設企画課)】
○ 繰り返しになるが、価格据置型総合評価落札方式は、平成28年度より一部工事を除く一般競争入札を対象として適用を開始したもので、現時点で1年半ほど経過したところである。
○ この方式を適用する前の平成27年度に比べ、適用後の平成28年度には、調査基準価格を下回る入札の平均落札率が上がったことから、価格据置型について一定のダンピング抑制効果はあったものと考えている。
質問 筒井タカヤ議員
質問のC
・国交省は、地方自治体など公共工事の発注者による入札契約の適正化に向けた取り組みを促進させるべき最中であります。特に低入札価格調査制度や最低制限価格制度の導入・徹底を目指しています。
「価格以外の要素」と「価格」とを『総合的に評価』して落札者を適正に決定するのが総合評価方式による一般競争入札の基本であると思いますが、今一度県当局の見解を求めます。
(答弁を求めます。)
【答弁要旨(建設企画課)】
〇 委員ご指摘のとおり、総合評価落札方式は、「品確法」の基本理念に沿って「価格」と価格以外の要素すなわち「品質」が総合的に優れた内容の契約がなされることにより、公共工事の品質確保を図るものであり、本県においては、一般競争入札は原則としてこの方式を適用するものとしている。
質問 筒井タカヤ議員
質問のD
・実績の少ない業者は、その少ない分を本来の総合評価方式が持つ価格面での評価を期待して受注機会を大きくすべく入札を行います。
即ち少ない実績であるからその分を価格でカバーして努力することは、従来でもごく自然なスタイルでありました。
この点は何処でも、極めて何処にでも見られる普通なことであります。公共事業以外の民間と民間の受注でも当たり前です。
低い価格も、この価格が異常な低価格(ダンピング)であるか無いかを発注者は慎重に検討することで、受注者側が示した価格を一度評価します。
その後も発注者によるこれまでの実績の評価も加え適正度の評価判断をして落札者を決定させます。
これが本来あるべき姿の総合評価方式原型でありかつ手順であると思います。
このような方式の一例として、お隣の三重県は、調査基準価格を下回る入札を行った者で、入札時に施工体制調査意向確認書なるものを提出し、施工体制確認調査の結果、各審査項目に関する体制がすべて構築されていると認められた場合、入札価格に対する評価値を与える制度を行っています。
この三重県の方式と愛知県の施行する「価格据置型総合評価方式」の違いについて述べて下さい。
このような入札制度が基本となる現行の総合評価方式であり、かつ一般競争入札の基本概念であります。
愛知県もH27年度まではこの基本に沿った入札制度でありました。
しかし、
・なぜ今、疑念を抱かれるような入札制度を取り入れたのか経過もふまえてご説明ください。
(答弁を求めます。)
【答弁要旨(建設企画課)】
○ 三重県においては、委員ご指摘のとおり、調査基準価格を下回る入札は、入札時に施工体制審査意向確認書を提出し、審査の結果、各審査項目に関する体制がすべて構築されていると認められた場合、調査基準価格を下回る入札金額にて評価値を算出しているが、この施工体制審査意向確認書の提出がない場合は、愛知県と同様に調査基準価格で価格を据え置き、評価値を算出している。
○ 三重県に聞き取りを行ったところ、ほとんどの業者が施工体制審査意向確認書を提出しておらず、結果、実際の運用としては、愛知県の価格据置型総合評価落札方式と同じ運用となっている。
○ 先ほども答弁したとおり、価格据置型総合評価落札方式は、従来の公共工事の品質確保を図ることに加えて、平成26年度の品確法改正により、公共工事の施工者が担い手を育成・確保するために必要となる適正な利潤を確保できるよう、必要な措置を講ずることが発注者の責務とされたことを受け、導入したものである。
質問 筒井タカヤ議員
質問のE
・新たな企業の育成を大いに考えることは、愛知県の行政側としての立場として必要なことであります。その芽を摘むようだとも推察が出来る手法は、将来的な展望を考えた上で適当でないと私は思います。今後の行政の改善に向けた取り組み方検討についての見解を求めます。
このままでは新たな企業が生まれ育っていく意欲・向上力を培う環境を失してしまう恐れがあると思うが、どのようにお考えか?
(答弁を求めます。)
【答弁要旨(建設企画課)】
○ 新たな企業の参入については、まず、官民問わず、工事の「施工実績」を積んでいただくことにより、企業の技術力を高めていただく必要がある。
○ 総合評価落札方式における評価項目の一つである「施工実績」については、土木関係工事では、愛知県での実績のみでなく、国や市町村、道路公社などの特殊法人等が発注する公共工事の施工実績も対象となる。
○ また、建築関係工事では、これらの公共工事に加え、民間工事の施工実績も対象とし、評価している。
○ その他、企業のISO9000シリーズの取得や、配置予定技術者のCPDの実績、ボランティア活動や雇用実績などの地域精通度・地域貢献度等については、県工事の実績とは関係が無い部分なので、企業や技術者の努力により評価されるものと考えている。
質問 筒井タカヤ議員
質問のF
地域中堅・中小総合建設業は、地域インフラの安定的な整備、維持・管理を担う「地域の守り手」としての役割を果たす必要がある。
しかし、特に災害時の応急復旧や復興などの場合、愛知県内の現状として海上(港湾・漁港等)関係工事における実績ある県内地場建設企業数が基本的に少なく限られているのであり、将来大災害等の発生を考慮するならば、早急に対応出来うる体制を整えるべきで、新たな企業育成について県当局がどのように取り組むか?具体的な方針(考え)をお話しください。
(答弁を求めます。)
【答弁要旨(建設企画課)】
○ 災害時において、愛知県建設部が管理する公共土木施設が被災した場合の応急復旧等の対応は、基本的には、エリアや区間を分割して、地元建設業者と締結している「愛知県建設部公共土木施設防災安全協定」の協定により、対応している。
○ しかしながら、広域的に渡るような災害が生じた場合の対応の備えとして、全県各地で速やかに復旧活動が行えるように、全県に渡って組織されている業団体と締結している「包括的な防災協定」で、対応できるようにしている。
○ この2つの協定は、愛知県建設部が管理する公共土木施設全般を対象施設とした協定であり、災害時に早急に対応できるように体制を整えているところである。
○ また、地元建設業者は、災害時の緊急対応等地域の安全安心の確保に大きな役割を果たしていることから、「愛知県公共工事発注方針」において、地域における活動拠点の有無や災害協定等に基づく活動実績の有無など、価格だけでなく地域における社会貢献活動なども加味して評価するべく総合評価落札方式を拡充し、地元建設業者の育成に配慮しているところである。
質問 筒井タカヤ議員
質問のG
最後に、先日10月3日の業界紙、建通新聞に総合評価と低入札調査に関する記事が掲載されていました。
記事では、
・ 国土交通省と総務省が、一部の地方自治体で総合評価方式の適用工事に最低制限価格を導入していることを問題視し、総合評価による入札で低入札価格調査制度を運用するよう、全国の自治体に要請した。
・ 地方自治法施行令では、総合評価に最低制限価格の設定を認めていないため、調査基準価格と「失格基準」を併用し、適切にダンピング対策を講じるよう求めた。とされています。
一部の地方自治体ということで具体的な自治体名は記載されていませんでしたので、本県の対応について説明を求めます。
(答弁を求めます。)
【答弁要旨(建設総務課)】
○ 本県では、建設工事の競争入札に係る低入札対策として、工事の規模等に応じて、失格判断基準の設定を含む低入札価格調査制度か、最低制限価格制度のどちらかを適用することとしている。
○ 総合評価落札方式の入札では、失格判断基準を併用した低入札価格調査制度を適用しており、国土交通省等からの要請のとおり、適切に運用している。
質問 筒井タカヤ議員
今回の建通新聞の記事を見て思いますのは、国が方針を示しているにもかかわらず、それぞれの都道府県や市町村が、様々な入札制度を設けているということです。
それぞれが知恵を絞って工夫をしているのか、あるいは、恣意的なものがあるのか?
私は、これまで、価格据置型総合評価方式を始め入札制度について、様々な議論をしてまいりましたが、それは、愛知県の制度が必ずしも正しいとは思っていないという思いがあるからです。
工事を適正に履行し、品質を確保する必要があるということも理解はできますが、その技術力を評価するにあたって、過去の実績を重視しすぎてはいないでしょうか。
見直すべきことは、しっかりと見直しをしていただきたい。
固定概念にとらわれず、引き続き、適切な入札制度の改善に取り組んでいかれるよう要望いたしまして、質問を終わります。