平成29年2月議会 建設委員会

 

 

○県営住宅について

 

 

(質問)筒井タカヤ委員

 

県営住宅の管理に関する問題についていくつかお尋ねをいたします。

 

私は、今日の県営住宅が抱える多くの問題について、これまでの県議会において、繰り返し、繰り返し厳しく県の姿勢を問いただしてきました。

 

中でもこの2年間は、建設委員として在籍させていただき、この委員会の場で、県営住宅の数々の問題を具体的に取り上げてきました。

 

 

県営住宅の空き家が一万戸もあること、修繕費がまともに確保できていないこと、特に計画修繕は、この十数年間に亘って実施しておらず、共用部分の劣化が放置されたままになっていること、共益費の徴収が自治会任せにされており、今日の超高齢社会では、自治会で共益費を徴収することは、もはや不可能になりつつあることなど、県営住宅の現状をお示しし、議論をしてきました。

 

 

そして、議員の皆様にも、もっと県営住宅の現場に足を運び現状を見て下さい、自治会や入居者の方々の切実な訴えに耳を傾けてくださいとお願いしてきました。

 

私は、県営住宅の問題は、私が県議会の場で県の姿勢を正すだけでは解決ができない、もっとこの問題の認知度を高め、県民に広く訴えるべきであると考えておりますので、本委員会での議論は、私のホームページに載せたり、自分で啓発資料を作成し配付することなどにより、県議会の皆様、自治会・入居者の方々、県民の皆様にも公開し、広く啓発を行ってまいりました。

 

 

今議会の一般質問では、自民党議員から、議員自ら県営住宅の現場をいくつか見て回り、自治会や入居者からの要望を直接聞いたことをもとに、県営住宅の入居促進、県による共益費の徴収、災害に備えた県営住宅の活用などについて質問し、建築局長からそれぞれ答弁がありました。

 

 

前回の12月の本委員会においても、私の質問に対し、県当局から自治会や入居者と県・住宅公社との話し合いが活発に行われているとの答弁がありましたが、そのような場に、県会議員が参加することも度々あると聞いており、議員自ら県営住宅に足を運び、自治会や入居者の声に耳を傾けるようになってきたことは、県営住宅の問題が広く県民に認知されるようになってきたことと考えております。

 

 

 

今後とも県営住宅の問題については、広く県民に呼びかけ、議論を深めていく必要がありますので、議員の皆様にも積極的な取り組みをお願いするものであります。

 

さて、今回は県営住宅の修繕の問題を取り上げます。

 

まず、平成29年度の県営住宅管理事業特別会計予算において、修繕費はどれだけ確保し、平成28年度予算と比較してどのようになっているのかを説明してください。

 

 

 

 

(答弁)県営住宅管理室 主幹

 

県営住宅の修繕につきましては、入退去に伴う空家修繕の他、水漏れなどの緊急対応や小規模な修繕を実施する「一般修繕」、外壁や手すりなどの共用部分を予防保全的に修繕する「計画修繕」、その他保守管理等がございます。

 

平成29年度予算における修繕費は、一般修繕費22億円、計画修繕費107千万円、その他保守管理費等が152千万円で合計479千万円でございます。

平成28年度予算との比較では、一般修繕費が28百万円の増、計画修繕費が246百万円の増、その他保守管理費等が1千6百万円の減と、全体で257百万円の増額となっております。

 

 

 

 

(質問)筒井タカヤ委員

 

今、一般修繕費と計画修繕費が増加、その他保守管理費等が減少し、修繕費全体では257百万円の増加との説明がありました。

 

厳しい財政状況の中で、修繕費が増加したことは評価いたします。

 

計画修繕費が大きく伸びているようですが、計画修繕の内容を具体的に説明してください。

 

 

 

 

(答弁)県営住宅管理室 主幹

 

計画修繕につきましては、外壁・手すりの改修、給水設備の改修を平成28年度に引き続き実施してまいります。また、エレベーターの改修を進めるべく、所要の経費を計上しております。

 

 

 

 

(質問)筒井タカヤ委員

 

エレベーターの改修については、私が、平成2712月建設委員会で質問したところ、「エレベーターを設置してから相当年数が経過し、定期的に交換するべき部品の供給をメーカーが停止するために、順次計画的に実施している」との答弁があったと記憶しておりますが、その内容をこれまでの実施状況を含めて具体的に説明してください。

 

 

 

 

(答弁)県営住宅管理室 主幹

 

エレベーターにつきましては、老朽化の状況、メンテナンス部品の供給状況を勘案し、エレベーターを駆動するための電動機や巻上機、制御盤などの基幹装置の取り替え、扉が開いたまま動かないようにするための装置や地震管制装置の設置など、設備の更新とともに安全性の向上を図る改修を、平成25年度より計画的に進めております。

 

平成27年度までの3か年で12団地45基を、28年度は12団地41基を改修しており、29年度は10団地21基の改修を予定しているところでございます。

 

 

 

 

(質問)筒井タカヤ委員

 

これまでの答弁では、修繕費は増額しているものの、修繕の内容は平成28年度と大差なく、従来と同様の内容の修繕に留まることが分かりました。

 

そこで質問します。自治会や入居者からの要望の多い外壁の塗装、屋上防水の全面的な改修、排水設備の改修などはどうなっているのでしょうか。答弁を求めます。

 

 

 

 

 

(答弁)県営住宅管理室 主幹

 

画修繕については、現在実施しております外壁・手すり、給水設備、エレベーターの他、排水設備や電気設備、屋上防水や外壁塗装など、計画的に取り組む必要がございます。

 

しかしながら、限られた予算の中で、入居者の安全確保や利便性維持を行う観点から、個々の住宅設備の老朽化の度合いや不具合の頻度など、緊急性、重要性を勘案して、優先順位をつけて実施しているところでございます。

 

従いまして、外壁・手すりの改修、給水設備の改修、エレベーターの改修を優先して計画修繕に位置づけ、その他の項目につきましては、一般修繕にて対応してまいります。 

 

 

 

 

(質問)筒井タカヤ委員

 

私が、これまで県議会の場で何度も何度も繰り返し言ってきたことですが、県営住宅の修繕の現状は、計画修繕とはいっても、予防保全的に行うべき本来の計画修繕ではなく、老朽化して既に不具合のある所を事後的に修繕する緊急対応に過ぎないのではありませんか。

 

県が計画修繕としている項目、例えば、説明にあった外壁の改修についても、本来ならば剥落(はくらく)や亀裂のある部分を補修した上で塗装を全面的に塗り替えて、不具合の発生を防ぐのが本当なのです。しかし、県では問題が起こった部分を補修しているだけなのです。

手すりにしても、錆びてもろくなった部分だけを修繕するのではなく、手すり自体を取り替えたりするのが本当の計画修繕なのです。

現状は、もはや計画修繕ではありません。単なる補修に過ぎないではありませんか。

 

修繕の予算が絶対的に不足しているのです。

 

以前は県営住宅も「県営住宅計画修繕5カ年計画」を策定して計画修繕をしっかりと実施していたではありませんか。なぜこんなことになってしまったのでしょうか。答弁を求めます。

 

 

 

 

(答弁)県営住宅管理室 主幹

 

計画修繕については、かつては「県営住宅計画修繕5カ年計画」を策定して計画修繕を実施しておりました。

 

しかし、平成8年に公営住宅法が改正され、従来の工事費や修繕費をベースとして家賃を算定していた「法定限度額家賃制度」から、低額所得者の家賃負担能力を基本として個々の住宅の便益に応じて家賃を算定する「応能応益家賃制度」に移行いたしました。

 

その結果、家賃収入が減少し、十分な計画修繕費が確保できなくなった状況がございます。

 

 

 

 

(質問)筒井タカヤ委員

 

私は、この問題について、繰り返し建設委員会で取り上げ、県当局の姿勢を厳しく問いただしました。そしてその後も、なぜこんなことになってしまったのか、この問題の経緯を調べてみました。

 

以下、公営住宅の歴史的な経緯を振り返り、今日の県営住宅が抱える問題点を明らかにしてまいります。

 

公営住宅法は、戦災による住宅難を解消するため、昭和26年に制定されましたが、公営住宅の家賃は、住宅の工事費や修繕費を基に事業主体が定めるという、いわゆる「法定限度額家賃制度」が長く採用されてきました。

 

 

しかし、高齢者や障害者などの、真に住宅に困窮する方に良好な住環境を備えた公営住宅を供給するため、平成8年に、公営住宅法の抜本的な改正が行われました。

 

この改正により、公営住宅の家賃は、入居者となる低額所得者の家賃負担能力と、個々の住宅の便益に応じて定められる「応能応益家賃制度」に転換したのです。

 

本県においては、公営住宅法の改正に伴い、平成10年に応能応益家賃制度へ完全移行し、入居者の家賃負担が大幅に軽減されたところであります。

 

この改正は、公営住宅が住宅セーフティネットとしての役割を果たすために必要不可欠な改革でありましたが、一方では家賃収入の大幅な減少をもたらしました。

そこで質問します。家賃制度の改正による影響について、具体的な金額を踏まえて説明してください。

 

 

 

 

(答弁)県営住宅管理室 主幹

 

家賃制度の改正による収入への影響につきましては、法定限度額家賃制度の最終年度である平成9年度予算では、家賃収入は224億円計上されておりましたが、応能応益家賃制度に移行した平成10年度予算では182億円となっております。

 

なお、その後、入居者の低所得化の進行などもあり、平成29年度の家賃収入予算は134億円となっております。

 

 

 

 

(質問) 筒井タカヤ委員

 

応能応益家賃制度により、県営住宅の家賃は民間賃貸住宅の家賃に比べて非常に安い金額となりました。当然、家賃収入だけでは住宅の維持管理に必要な経費を(まかな)うことができません。

 

しかし、この家賃収入の減少に対しても、国は対策を講じています。

 

以下、その内容をわかりやすく説明します。

 

家賃制度の改正と同時に、国は民間賃貸住宅の家賃との差額を補助する、家賃対策補助制度を整備しました。

 

これにより、県は低廉な家賃で住宅を提供しつつも、民間賃貸住宅と同等の収入を確保できるというのが、応能応益家賃制度の仕組みなのです。

 

愛知県でも、平成16年度には34億円もの国庫補助金を特別会計の歳入に計上しています。

 

 

ところが、平成17年から18年にかけての三位一体改革において、この国庫補助金が税源移譲の対象になりました。

 

これは、家賃対策補助を廃止する代わりに、その分だけ県の税収に上乗せをするというもので、その結果、特別会計で受け入れていた国からの補助金が、全て一般会計の歳入に振り替わったのです。

 

 この税源移譲された補助金については、一般会計から特別会計へ繰入金として措置されるはずですが、平成29年度予算における繰入金は15億円しかなく、財源議論が不十分であるとしか思えません。

 

 

税源移譲については、当時の国においても、家賃の減収分を補てんする補助金を税源移譲で地方に任せてしまうことに対して議論があったようですが、愛知県は、まさに国が心配したとおりの状態になっているのではないでしょうか。

 

今日の県営住宅の抱える様々な問題、例えば老朽化の問題、空き家の増加の問題などは、家賃や補助金の制度改正の際に、財源をしっかり確保せず、本来提供すべき入居者への様々なサービスを低下させてきたことが原因なのではないかと考えざるを得ません。

 

平成2710月の建設委員会では、応能応益家賃制度への移行や三位一体改革での税源移譲など一連の改革にあたって、建築局はどのように対応してきたのか建築局長に答弁を求めたところ、「もう少ししっかりと対応するべきであった」と率直に答弁されました。

 

そこで質問します。平成29年度当初予算の編成に当たり、建築局はこの問題に対してどのように対応してきたのか。答弁を求めます。

 

 

 

 

答弁 県営住宅管理室 主幹

 

今年度の予算編成に先立ち、昨年の6月頃から、県営住宅の修繕のあり方、特に計画修繕の必要性等について財源問題も含めて財政当局と議論を続けてまいりました。

 

 その議論の過程で、計画修繕の必要性や、繰入金による財源確保については一定の理解が得られ、その結果、厳しい財政状況の中であっても、維持修繕費を対前年度で257百万円増額することができたものでございます。

 

 

 

 

質問 筒井 タカヤ委員

 

今の話で成果として努力したことは認めたいと思います。しかし、計画修繕については、予算額は増えたものの、その内容については昨年度までの延長線上にあって、根本的な解決にはほど遠いことは事実であります。

 

 平成8年の公営住宅法改正の改革の趣旨は、応能応益家賃制度によって低額所得者である入居者の家賃負担額を減少させる一方で、その減収分はしっかりと国が財源を補てんして、入居者サービスを低下させないことにあったはずです。

 

 

 三位一体改革で国の補助金が地方の固有財源に振り替えられていても、家賃の減収に対する補てんがあるという本質は変わっていません。

 

応能応益家賃制度によって家賃収入が減少したから計画修繕を止めてしまったというこれまでの県の主張は、とうてい理解が得られるものではないのです。

 

今後、どのように対応していくのでしょうか。答弁を求めます。

 

 

 

 

答弁 県営住宅管理室 主幹

 

計画修繕につきましては、外壁・手すりの改修を平成26年度から、給水設備については平成28年度から、エレベーターの改修については平成29年度から特別会計の予算に計上するなど、優先度の高い項目を精査し徐々に増額してきたところです。

 

 来年度以降も、計画修繕の必要性についてはしっかりと主張していくと共に、一般会計からの繰入金による、適切な財源の確保についても議論を進めてまいります。

 

 

 

 

質問 筒井タカヤ委員

 

しっかりと議論をして、計画修繕を適切に実施していただきたいと思います。

 

最後に建築局長に総括して答弁を求めます。

 

 県営住宅の修繕費は、法定限度額家賃制度の最終年度である平成9年度予算には82億円ありましたが、平成29年度予算では48億円となり、約42%もの減額になっています。

 

 

 しかし、実はこの修繕費、平成24年度には過去最低額の34億円にまで落ち込んでいました。平成9年度との比較ではなんと6割減で、募集する空き家の修繕すらおぼつかなくなってしまっていたのです。

 

 さすがにこれはまずいとなったのか、平成25年度から毎年予算を増額して、平成29年度には48億円となり、平成24年度との比較では14億円も増やすことができたのです。

 

 計画修繕も、少しずつではありますが復活させてきた。これは紛れもない事実です。建築局も財政当局との交渉にあたって相当な努力をしてきた成果であります。

 

 建築局長さんは、今年度末でご退職とのことですが、あなたの在任したこの2年間では、計画修繕に限れば69千万円増額することができたのです。

 

 

 これは率直にいって、よく頑張ったと思います。

 

 

 強いリーダーシップを発揮して、職員の先頭に立って引っ張り、財政当局ともしっかりと交渉していただいた。こうした成果を、あなたの代で終わらせてはいけない。次の方にしっかりと引き継いでいくことが大切です。

 

 建築局長の決意を伺いたい。答弁を求めます。

 

 

 

 

答弁 建築局

 

今回は、県営住宅の修繕費の問題についてご質問を頂きました。

 

これまでの議論にもありましたように、修繕費、特に計画修繕費の確保は非常に重要な課題であり、建築局長に就任以来、また、建築局としてはそれ以前から課題であったと思っております。

 

少しでも修繕費を確保するよう努力してまいりました。特に今年度は財源の問題にも踏み込み、財政当局とも議論し、予算要求を行ってまいりました。

 

今年度、財政状況の厳しい中で、ある程度の成果はあったものと考えておりますが、まだまだ十分ではないと思っております。

 

 

この修繕の問題のほか、筒井委員からは、空家の問題や共益費の徴収問題などについてもご意見、ご質問をいただいております。

 

 

担当の室長、また職員も課題意識をもって取り組んでいるところであります。特に共益費は、方向性はしっかり立てられたと思いますが、これからが大変になってくると思いますので、来年度以降もしっかり努力していく必要があると考えております。

 

こうしたことも後進にもしっかりと引き継いで行きたいと考えております。