H29年3月16日
建設常任議会
―議事録―
総合評価落札方式の評価方法について
質問 筒井 タカヤ委員
平成28年12月13日に開催された愛知県議会(建設常任委員会)にて、現在愛知県が施行している価格据置型総合評価落札方式については、これで良いのかと少し疑念を申し上げました。
ここで愛知県議会(建設常任委員会)議事録を読み返してみると、愛知県が「価格据置型総合評価落札方式」を施行する理由は、
平成17年度の品確法の制定に始まり、平成26年の品確法の改正により、ダンピング受注は「公共工事を施工する者が担い手を育成・確保するために必要となる適正な利潤を確保できないおそれが」ある。
これにより更なるダンピング受注の防止対策が求められた。これを受け愛知県は、調査基準価格を下回る入札については、その入札価格にかえて据置価格と称した調査基準価格を代入して評価値を算出し、落札者を決めるものでした。
即ち、総合評価落札方式の評価方法において、入札業者が決定した入札金額を調査基準価格まで引き上げることで、労働者の適正な労働条件や建設業者の適正な利潤が確保されるとともに、将来にわたる工事の品質向上など期待するものであるとする県当局の見解だと私は理解しました。
しかしこの方法には何点かの疑問点があると私は意見をお話ししました。
その問題点と回答は、要約すると下記となると考えます。
入札価格によって評価値を上げることが出来ず、実績のある業者のみが有利に働く。よって新規業者の算入が難しいのではないか?
@ 一定規模以上の技術力を要する工事(全体の約3割弱)のみに採用しており、全体の7割を占める指名競争入札で実績を積んで評価点を上げることができる。
A 「技術提案」によって評価点を上げられる。
B 「施工実績」は、県発注工事だけではなく、国や市町村、特殊法人等も評価対象としているため、評点アップの対象を多くしている。
C 企業のISOシリーズ、CPD実績、ボランティア活動及び雇用実績などの地域貢献度・地域精通度にて評価値を上げる。
この4点でもって、門戸を閉ざしていないと県がお示しになったと理解します。
私は一般の県民の心情から考えると、素直に「ハイ、わかりました」とはどうしても思えないんです。一人の県会議員としては、良いお仕事をなるべく効率的(安い)価格でもってやって下さっているかをチェックするのが私共のお仕事であると考えるからです。
再三で恐縮ですが、今一度質問させて頂きます。
@
指名競争入札において、土木関係工事案件は、1件当たりの工事規模が数百万程度から3千万円以下の物件が数多く見受けられます。
建設部発注の土木関係工事は規模の小さいものが多く、このような工事はランクが低い業者を対象としているため、ランク上位の業者は指名・応札できないではないか?
このようになさっておられる理由は何故ですか?答弁してください。
@ 建設総務課 主幹 答弁
建設部では、現在、原則として、5千万円以上の工事は一般競争入札、5千万円未満の工事については、一部工事を抽出して一般競争入札を試行しているほかは、指名競争入札としております。
従いまして、指名競争入札は、規模の小さな工事に適用しております。
また、従来から、工事規模に応じて適切な業者を選定するため、発注件数の多い一般土木工事を始めとする8業種については、入札参加資格を有する建設業者を経営状況等によりランク分けし、ランクに応じて、参加できる入札の工事規模を「発注基準」として定めております。
また、この規模の工事の受注者として地元の中小建設業者を想定しておりますが、指名競争入札は、災害時の緊急対策等を担い「地域の安心・安全」に大きな役割を果している地元建設業者の確保・育成にも、効果的な入札方式であると考えております。
質問 筒井 タカヤ委員
また、入札制度の変遷の中で、指名競争入札は、
・ 業者を指名する過程で恣意的な運用の恐れがあると思われます。
・ 優良だが当該発注者に対する実績がない業者が参加機会を得にくくしておられます。
・ 指名により入札参加者が限定されると談合を誘発しやすくなると私はこれまでのこの業界を見ていて感じています。
指名競争入札には、これらのデメリットがあると思いますが、県当局は指名競争入札についてどのような見解をお持ちか答弁を求めます。
A建設総務課 主幹 答弁
指名競争入札には、信頼できる受注者を選定できることや、一般競争入札と比較して手続きが簡易であり早期に契約できることなどのメリットがございます。
こうしたメリットのある指名競争入札の運用にあたって、建設部では、工事規模に応じて選定業者数を定めることで競争性を確保しつつ、また、恣意的な選定とならないように工事の施工能力、工事成績などを総合的に勘案するとともに、建設業者の受注機会の確保にも配慮しながら入札参加業者を選定しております。
なお、本県が採用している電子入札システムにおいては、入札に参加している業者数や会社名などは、入札手続きが終わるまで入札参加者にはわからない仕組みとなっております。
質問 筒井 タカヤ委員
また、建設三団体に未加入の業者は基本的に指名されにくいと聞いています。
この中でどうして実績を付けることができましょうか?
当然むやみやたらに指名した場合、不良不適格業者が参入することも予想されるため、実績のある業者を選定するのは当然であるとのお考えでしょうか?
即ち、実績のない業者が指名されるのは極めて厳しいと私は思えてなりません。
それでは次の点についてお尋ねしたい。
・ 県土木の指名競争入札型工事案件の中で、県認定のAランク業者向けの工事件数はどれくらいあるのだろうか?お尋ねします。
・ また、どのような基準・判断にて指名業者選定を行っているのか?見解をお示しください。
B建設総務課 主幹 答弁
先ほども答弁いたしましたとおり、格付けや発注基準によりまして、土木関係工事の指名競争入札では、舗装工事及び造園・植栽工事を除き、指名競争入札の対象となる予定価格が5,000万円未満の工事については、原則として、B等級以下の業者を選定することとしております。
しかしながら、舗装工事など一部の工種については施工できる業者が限られておりますことから、A等級業者を指名できる入札も、平成28年度は90件ほどございました。
また、業者の選定にあたりましては、工事規模に応じて選定業者数を定めることで競争性を確保しつつ、また、恣意的な選定とならないように工事の施工能力、工事成績などを総合的に勘案するとともに、建設業者の受注機会の確保にも配慮しております。
質問 筒井 タカヤ委員
A
技術提案については、公表されている落札結果の内容を見ても、技術力のある業者には、基本的に大きな差違は無いように思います。
よって、過去の実績が大きく受注に結びつく要因となります。(あえてそうする理由をお話しください。)
地元企業を育てる意味は判るのですが、これが本当の意味で競争力を失いかねません。また、他から見ると差別化していて異議が出ませんか?
これが心配です。お答えください。
B 建設企画課 主幹 答弁
技術提案について、これまでの入札結果における各企業の加算点は0点から満点までバラツキがある状況となっております。
また、総合評価落札方式での入札案件のうち、技術点の割合が最も高い標準型について、今年度も含め過去3年間の一般土木工事の入札結果をみると、結果として技術点が最も高い業者が落札しております。
C
国や市町村、特殊法人等の実績については、
・ 国や県に比べて小さなエリアを管轄する地方公共団体においては、発注される工種が限られている(ex. 港湾工事を発注する団体は非常に限られる)。
・ 総合評価落札方式を採用している他の団体も同様の傾向となっているため、受注に結び付きにくい。
・ 県より下の自治体は発注規模も小さく、総合評価の加点(評価点アップ)になりにくい。
・ 他団体の表彰は、総合評価の加点対象にならない。
従って、総合評価点を上げるには乏しいと私は思ってますが?(どうお考えですか?お答えください!)
D 建設企画課 主幹 答弁
総合評価落札方式において評価している「施工実績」については、国や県の発注した工事に限らず、市町村や道路公社等の特殊法人等が発注した工事も評価対象としております。
県の発注工事の規模は大規模なものから小さなものまで様々であり、「企業の施工実績」に係る対象工事の規模は発注する工事の規模に応じた実績を評価することとしております。
質問 筒井 タカヤ委員
C実績以外の要素については、ISOシリーズ、CPD実績、ボランティア活動等は、地元に根差した経営状況の良い会社や技術力のある会社は、社内職員の技術教育や社会貢献は最大限常々行っているため、大きな差違はないと私は考えます。
従って、実績ある業者には基本的に差違は無く、総合評価点を上げるのになかなか乏しいと考えます。
私なんぞは日本大学出身で、愛知県校友会の会長でもあり、会合の都度その度に愛知県は・・・と言われる機会が多いんです。
ここまでは従来の愛知県の前回の委員会における回答を再考してみた思いの重なりです。現在の価格据置型総合評価落札方式を施行している以上、ランク上位の技術力のある業者が実績の無い工種にいくらチャレンジしても受注に結び付く可能性は非常に少ないなとしか思えないのです。
県会議員として県民を代表する立場上、入札契約制度は、最小の経費で最大の効果を上げるという地方自治の理念に基づき、競争性、公平性、透明性を担保する必要があるのです。それがお仕事でもあるのです。
【愛知県公共工事発注方針】の一部に、「地元建設業者の育成、健全な発展のため、地元建設業者の受注機会の確保に努める」と記載されています。
前回から何度も繰り返し述べていますが、明らかに実績のある業者に限って特別に有利な方式となっており、もう少し実績の枠を与えてあげるような改善もしないと片寄りが多くなり、将来問題も起きることになりはしないか心配しています。
ここで今少し改善していただきたいなと考えます。
会社の経営も健全であり技術力のある実績の無い業者は、現状では実績偏重となっているこの価格据置型総合評価落札方式では、受注機会に乏しいです。
そこで価格据置型を採用している工事は、技術力を必要とする一定規模以上の工事であること、また品確法の精神である「将来にわたる公共工事の品質の確保とその担い手の中長期的な育成」を達成するため、低入札(ダンピング)を防止することに鑑み、下記の改善を提案申し上げます。
A)技術提案(施工計画)による評価点を大きくする。また実績は過度に評価しない。
B)最低制限価格を採用し、その率の引上げを行う。
技術提案(施工計画)により、県側が求めている技術力を評価できる。
最低制限価格の採用により、県側が主張している将来的に健全な会社運営及び公共工事の品質を確保出来る。と私は考えます。
建設に関しては全くの素人ですが、私なりに真剣に考えた到達点です。
これにより多くの業者に新規参入の扉が開放され、本来の入札競争原理が働く事となります。
私の見解について、県当局のお考え(見解)を求めます。
(6)技術提案について・・・建設企画課 主幹 答弁
最低制限価格について・建設総務課 主幹 答弁
総合評価落札方式においては、工事を施工する能力については、施工実績や工事成績等のいわゆる「過去の実績」とともに、「技術提案」についても評価項目としているところです。
技術提案の評価点については、工事に求められる技術力に応じて、加算点合計の1割〜5割程度の割合を技術提案に配点しております。
技術提案の配点の他、企業の技術力や配置予定技術者の能力などの評価項目や、その内容、配点など、落札者決定基準と呼んでおりますが、これについては、法の規定に従って、学識経験者等で構成する「愛知県建設部総合評価審査委員会」で審議のうえ、適切に運用しているものでございます。
低価格による入札の排除は、公共工事の品質確保を図るうえで、重要な課題であり、低入札価格調査制度及び最低制限価格制度は、大変有効な制度であると考えております。
低入札価格調査制度は、落札候補者が調査基準価格を下回った入札を行った場合に、適正な履行が確保できるかどうかを調査して、適正な履行ができると判断されるときに契約する制度であります。
また、最低制限価格制度は、最低制限価格を下回った入札について、調査をすることなく失格とする制度でございます。
建設部では、平成19年度に、最低制限価格制度を本格導入し、その後、対象工事を、順次拡大してまいりました。現在では、指名競争入札の場合は、最低制限価格制度を採用することとしております。
総合評価落札方式による入札におきましても、低入札価格調査制度を適用するとともに、最低制限価格と同様に算出される調査基準価格を据置価格とする価格据置型を今年度から導入いたしました。
また、最低制限価格を算出する算定式につきましても、制度を導入して以降、5回にわたり見直しを行ってきたところであり、今後も必要に応じて見直しを行ってまいります。
質問 筒井 タカヤ委員
現況の価格据置型では、据置価格を下回る入札価格は総合評価値の算定時に据置価格まで引き上げられますが、その低入札価格にて入札した業者の落札金額は、何故か低入札のままである。
これは県の回答から外れていませんか!?(答弁を求めます)
E建設総務課 主幹 答弁
価格据置型総合評価落札方式は、従来の公共工事の品質確保を図ることに加えて、平成26年度の品確法改正により、公共工事の施工者が担い手を育成・確保するために必要となる適正な利潤を確保できるよう、必要な措置を講ずることが発注者の責務とされたことを受けまして、本年度から導入したものでございます。
この方式では、落札者を決定するための評価方法として、調査基準価格を下回る入札をしても、価格面では調査基準価格以上には評価しないこととしております。
この方式により、建設業者にも、将来にわたる公共工事の品質確保や担い手の育成、適正な労働条件の確保などができる入札をしていただけるものと考えております。
一方、契約にあたっては、落札候補者が契約の申込みをした価格を契約金額とすることが契約の基本原則でありますので、価格据置型の入札であっても、申し込み価格である入札価格が契約金額となります。
質問 筒井 タカヤ委員
次に最近の新聞に掲載されていましたが、国土交通省において、中小建設企業の経営力強化などを話し合う地域建設業ワーキンググループが設置されました。
建設産業政策会議は、建設産業が10年後も現場力を維持できるよう建設業法改正を視野に6月までに提言をまとめるとのことのようであります。
また国土交通省は、地域建設業WGの初会合でCランク業者が顕著に減少している現状を報告し、また、休廃業・解散が増加する動きが足元にあり、ここ数年公共投資が安定的に確保される中で人材不足や後継者問題に対する懸念も高まっているとしています。
これを裏付けるように、1月19日発表した東京商工リサーチの調査結果は、2016年に、休廃業・解散の件数が倒産の5倍近くに達したと調査結果を発表しています。
今後も経営者の高齢化や事業継承の難しさを背景に、増加するであろうとしています。
国土交通省はこうした現状が続けば、
@
中小建設企業の経営体力が弱体化
A
担い手不足が企業経営に深刻な影響
B
インフラの維持管理に支障を来す地域が発生
といった課題が生じ得ると説明しています。
こうした現状を踏まえ地域建設業の企業形態の見直し等、地域に根差した建設企業が安定的に事業を営めるよう、今後地域維持型契約方式の拡大や、同方式における競争性の確保なども視野に具体策を検討されるようです。
政策会議法制度・許可WGにおいては、建設業法の「これから」は、担い手の確保や生産性の向上といった政策的ニーズへの対応が求められ、地域によっては建設業の供給力に不足が生じる可能性があり、一つの流れで言えば、これまでの不良不適格業者の「排除」から、労働力人口の減少を見据えた従業者の働き方や供給力の維持を念頭に置く「確保」への移行が建設業法の改正に向けた大きなテーマとなります。
そして「重要なことは請け負いの位置付けや契約の形態以上に、建設工事を適正に行わせるという意味で技術力に着目した形で[法制度]をつくっていかなければならない」という意見のようです。私なりの勉強の分析です。
入札契約制度は、最小の経費で最大の効果を上げるという地方自治の理念に基づき、競争性、公平性、透明性を担保する必要があります。
この言葉は、すでに「3回目」です。私の考えの基本であります。
それに加え品質の確保も同じように重視しなければならないし、政策的には中小企業の保護・育成も踏まえなければならないため、総合的にバランスを取りながら(制度を)構築していかなければならない。
要するに「公共調達が目指すべきは、コストカットではなく、公平・公正な競争性であり、そして品質の確保を図ることである。」
これが、私が勉強した終着点でもあります。
最終目的は県及び私の考えもほぼ同じであると思いますが、施行している県の入札方式では、現在では実績のある業者のみに有利に作用しており、実績の無い業者が新規に参入できる(実績を積む)までには大きな時間を要することとなる。
よって各地域に計画されている大きなプロジェクトへの対応、大規模地震時に対応できる「地域の守り手」をスピーディーに健全な状態にしなければならないという考えが私の結論であります。
愛知県が施行する「価格据置型総合評価落札方式」は、何度も当局の回答をいただいて再考してみましたが、明らかに実績偏重を来している制度であります。
もっと広い門戸を開放すべく改善されるよう求めます。(答弁を求めます)
G建設企画 主幹 答弁
建設部の総合評価落札方式では、工事の難易度などにより、技術提案を評価するほか、「過去の実績」に加え、企業のISO9000シリーズの取得や配置予定技術者のCPD実績、ボランティア活動や雇用実績などの地域貢献度・地域精通度などの評価項目も設定しており、これらは企業や技術者の努力により加点される項目となっております。
また、建設部発注工事の実績についても、建設部発注の全工事の7割強を占める指名競争入札や総合評価以外の一般競争入札等の工事に参画していただき、さらに、良い成績をとっていただけば、きちんと評価される仕組みであり、ダンピング対策の強化等を目的に導入した価格据置型総合評価落札方式の入札における企業の参加において、決して門戸を閉ざしているということはございません。
総合評価落札方式については、制度の導入以来、毎年度、「愛知県建設部総合評価審査委員会」の意見も伺いながら運用改正を行ってきており、今後も、社会情勢の変化及び毎年度の運用結果の分析・検証、発注者としての課題だけでなく、「地域の守り手」となる地元の建設業界からの意見にも耳を傾け、よりよい入札制度に取り組んでまいります。
質問 筒井 タカヤ委員
建設委員としてこの委員会質問・討論の機会も、5月臨時議会で所属変更もあろうかと思いましたので、この「2年間」ずっと考えていたことを一杯議論させて頂きました。
未だ非力を感じています。私は他の議員と違って、「判らないことは判らない」、常に「判ったような顔をしない」を貫いて、理解できるまで、すぐ聞く、議論して真理を深めるよう努めています。
今回の質疑も、県当局とかみ合わなくてもあえてかみ合わせることもなく、何が真理かを求め県民の人として素直に聞くこと、話すことに力点をおいて43年目の県議として、これからもまだまだ努めてまいります。
(以上です。)