平成29年6月29日
平成29年(6月:県議会)建設常任委員会
〈議事録〉 筒井 タカヤ
(質問)筒井 タカヤ議員
【序論】
日本の歴史を顧みると、国・地方を支える基幹産業と言われる建設業は、地震・台風の自然災害の防止、農林・水産業を取りまく整備、都市整備及び環境対策の関連の事業を考えると仕事がなくなることは決してあるまいと言われてまいりました。
しかし近年の課題は、未来へと引き継ぐ建設産業の担い手の不足が深刻な情況になっています。
それを象徴する現象として、バブル期が崩壊する時期ぐらいまで大学には「土木工学科」と名付けられた専門学科が存在していたが、最近の日本の大学において「土木」と名のる学科はその多くが、「都市○○科」「環境○○学科」などと名称を変え、隠れ土木として生き残っています。
また高校・大学における卒業生の進路では、役所、コンサルタントなどの人気が高く、民間の工事施工会社には希望者が極端に少なく、大変に困惑している状況であるばかりか危機的でもあります。
土木の建設現揚は未だ3K(危険、きつい、汚い)と言われ、若い人の心を掴むには至っていません。
もしこのまま推移すると若者の人手不足は、東京五輪後には需要が減少することに加え、供給側の縮小も手伝って深刻な事態に陥るであろうと考えます。仕事を出したくても受け手がいないという状況を迎え、建設意欲はあるものの貧困な建設業では対応しきれなくなります。
表現は適切ではないが、地方の土木関連の事業者は、台風・地震の災害が発生する度に、復旧事業を神風が吹いたといって、これで自分達への仕事が来ると内心思っている業界の姿すら感じます。
昭和39年の東京オリンピック開催後、日本は空前の国土開発ブームとなり、大手ゼネコン及び地方土木企業はものすごく元気な時代を迎えました。
更に日本列島改造は、底知れない壮大な夢と希望を日本国民に植え付けました。国や地方は巨大プロジェクト開発を提唱し続けましたが、やがて世界が日本の国が深刻な財源不足となる経済環境となり、同時に労働者の働き方の考えも大きく変わるようになりました。
現在では数少ない建設希望者の卒業生の多くは、大手ゼネコンへ流れ、中小(地場)企業には流れにくくなっています。これは大企業への安定志向が働いているためであります。
例えば休日、給料水準、社会保険加入率、退職金等大企業と較べて地方の中小建設企業では整備が遅れているためであります。今、この時期に思い切った施策を打ち出し、自助努力で解決を図らないと生き残りは難しいのです。
こうした状況を打開するため、建設業の働き方改革実現に向け、長年の慣習を根本から変えるための「週休2日実現」へと歴史的な一歩を踏み出しています。
国土交通省が建設業の働き方改革や処遇改善(休日が増えた場合の給与水準確保等)に向けた施策を推進し、企業側は就業環境の改善と担い手の確保をし、生産性を上げ、工期などの要求に応え「週休2日」を実現していかなければ将来の若い世代へと繋がらないのであります。
日本の若者達は第1に休日、第2に厚生施設、社会保険、第3に給与を求めるようになったのです。
5月9日には国土交通省を中部地方整備局、岐阜・愛知・静岡、三重の4県、静岡・浜松・名古屋の3政令市によるブロック土木部長等会議も開催され、国と地方公共団体が連携し建設業の働き方改革の要となる現場の「週休2日」取得の拡大に取り組む等の会合が執り行われました。
また、財務省においては、5月10日の財政制度分科会にて生産性の向上、働き方改革を推進するとともに公共事業の透明性の向上、効率的な投資、建設業者の技術力・経営力の向上といった観点で自治体の入札制度を、国並みに改革する必要性に言及したと聞いています。
そこでお尋ねします。それらの会議の内容及び意味する所を詳しくお話しください。また、愛知県の建設業界の若い労働者を取り巻く環境、就業状況を判る範囲内でお話しください。(これは質問です。)
【答弁要旨(建設企画課)】
1点目の国土交通省と財務省による会議についてだが、
○ 「中部ブロック土木部長等会議」においては、建設業界への若手労働者の入職が年々減少し、将来の担い手不足が懸念されていることから、「完全週休2日制工事」などの建設現場の働き方改革に向けた取り組みや、建設工事において「情報通信技術」いわゆるICTなどの新技術を活用する「i-Construction」などの建設現場の生産性向上に向けた取り組みについて、国、県、政令市が意見交換を行ったものである。
○ また、「財政制度分科会」においては、公共事業は「量」で評価する時代は終わり、「質」の面での評価が重要であるとして、働き方改革や生産性向上に加え、地方自治体において、低入札価格調査制度など入札制度改革の取り組みが遅れていることから、国並みの制度へと改革するよう求めたものである。
2点目の愛知県の建設業界を取り巻く環境、就業状況については、
○ 近年の建設投資の低迷等により、企業の経営環境は厳しい状況が続いており、新規入職者の減少や若手労働者の離職、高齢化の進展など、将来にわたる担い手の確保・育成が大きな課題となっていると認識している。
○ 建設業就業者数の全国的な傾向は、国土交通省の資料によると、平成28年度は「492万人」と就業者数が最も多かった平成9年度の「685万人」に比べ、「約28%」減少している。
○ 本県においても、愛知県県民生活部統計課の資料によると、愛知県内の建設業就業者数は、統計データが確認できる平成14年度の「34万2千人」に対し、平成28年度には「26万4千人」と「約23%」減少している。
○ また、厚生労働省愛知労働局の資料によると、建設業における3年目までの若い労働者の離職率は、最近4年間は上昇傾向にあり、特に高校卒業者の離職率は平成21年の「約37%」に対し、平成24年には「約45%」と、この4年間で「約1.2倍」となっている。
○ このように、県内の建設業の担い手不足、特に若者の定着が難しいことがうかがえると考えている。
(質問)筒井 タカヤ議員
【(価格据置型)総合評価落札方式】
それでは本論に入ります。
H28.12.13 ならびにH29.3,16 の計2回の愛知県議会建設常任委員会において、現在愛知県が入札制度を施行している価格据置型総合評価落札方式について問題を提議し、その回答をいただきました。
まずこの2回の回答について簡単に感想を述べさせていただくと、質問に対し真摯に真正面で受け止めた判断ならびに対応がなされていないように感じています。
今回も新しい委員さんが大勢おられ、県が行っている入札制度の価格据置型総合評価方式について、今一度県側からご説明をいただき、これまでの私がお尋ねした内容と見解も含めて、新委員の皆さんにも理解が出来るようお話しください。
県当局のお考えをお示しください。(答弁を求めます。)
【答弁要旨(建設企画課)】
○ まず、総合評価落札方式だが、この方式は、平成17年に施行された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」、いわゆる品確法の制定を契機として、公共工事に導入されることになった方式で、その主たる目的は、価格だけでなく、公共工事の品質確保に直結する企業の技術力や配置予定技術者の能力などを含め、総合的に評価して、落札者を決定することにあり、平成18年度より本格試行を開始している。
○ 平成26年度に「品確法」が一部改正され、公共事業の施工者が将来にわたり担い手を育成・確保するために必要となる適正な利潤を確保できるよう必要な措置を講ずることが発注者の責務とされた。
○ この改正を受け、本県としても、「過度な価格競争いわゆるダンピングを防止する」ため、平成26年度から価格据置型総合評価落札方式を導入し、低入札対策の強化を図ったところである。
○ この方式は、総合評価落札方式において、落札者を決定するための評価方法として、据置価格を下回る入札をしても、価格面では、据置価格で評価することとしたものである。
○ 昨年度の12月議会および2月議会において、筒井委員より、この制度について、「価格競争による落札がされにくくなり、施工実績のない業者の落札が困難となる。」、また、「契約金額が高くなり、不経済ではないか。」といったご意見をいただいたが、
○ 「公共工事は将来にわたり品質を確保することが求められていることから、価格と品質が総合的に優れた内容の契約を行うことが必要であり、価格据置型が導入され、ダンピングを防止し、公共工事が適切に執行されることで、継続的に技術を確保・維持することにより、将来にわたる品質確保がこれまで以上に期待できる。」との考えをお示ししたところである。
(質問)筒井 タカヤ議員
今一度、県執行部自らが現在の入礼制度そのものについて、原点を振り返りつつ今後県内における地域建設業の企業形態の見直し等、地域に根差した建設企業が、安定的に事業を営めるよう競争性の確保なども視野に具体策を検討して頂きたいと重ねて申し上げます。
国土交通省における政策会議法制度・許可WGにおいては、建設業法の改正に向け、「重要なことは、請け負いの位置付けや契約の形態以上に建設工事を適正に行わせるという意味で、技術力に着目した形で【法制度】をつくっていかなければならない。」との考え方が示されています。
政策的には、中小企業の保護・育成も踏まえバランスを取りながら「公共調達が目指すべきは、コストカットではなく公平・公正な競争性であり、そして技術による品質の確保を図ること。」と示されています。
現在施行している県の入札制度方式では、実績のある又は実績の多い業者のみが有利に作用しており、実績の少ない業者が新規に参入できるための実績を多く積むまでには長い期間(時問)を要することとなります。
この様な仕組みが公平・公正な競争性のある入札制度と言えるかどうかは考えるまでもなく、私はよろしくないと見解を持っている1人です。
やはり一定水準の公平・公正さをもった競争入札であるべきであると提言致します。
実績の少ない業者が実績を積んで参加できるまでに時間を要するのは間違いないことであり、またその間にも総合評価方式の変更は十分に有りうることです。
それによってはまた参加できない状態に陥ることも考えられます。
国土交通省ならびに各自治体の発注工事では、新規参入は総合評価方式の中でほとんど弾かれてしまっています。何年も掛かって資格を得るまでに、会社は疲弊してしまう。時間がかからない方法を教えて頂きたい。
私は技術力を持った経営状況の良好な企業が、いつでもだれでもすぐに入札に参加出来る入札制度にするべきであると考えますがいかがでしょうか?
(答弁を求めます。)
【答弁要旨(建設企画課)】
○ 平成26年度の改正品確法の中で、「発注者は、工事の性格や地域の実情等に応じて、多様な入札契約方式の中から適切な方式を選択するよう努める。」こととされており、本県建設部においても工事の性格や規模に応じて、「指名競争入札」や「総合評価落札方式」、「総合評価以外の一般競争入札」などを選定して発注している。
○ これらのうち、「総合評価落札方式」は、一定規模以上の技術力を要する工事について採用しており、その採用割合は、年間約2000件の発注工事のうち約3割で、残りの約7割の工事については、「指名競争入札」や「総合評価以外の一般競争入札」を採用している。
○ 本県としては、企業の技術力を過去の施工実績やその工事成績などにより判断することとしており、「指名競争入札」や「総合評価以外の一般競争入札」の工事に参画し、実績を積むことで評価を受けることができるものと考えている。
(質問)筒井 タカヤ議員
「良いものを適正価格で、タイムリーに世の中に供給する」
これは発注者も同じ役割を共有しています。企業が一日も早く共用開始に向けて努力することは世の中の利益になるのです。発注者は、時代の要請を的確に受けて企画し、改革ならびに整備を進めて行く。このことが、県民や建設業者になかなか理解されていないように思われます。
そこで質問です。
県当局として十分に理解されるように努めるにはどうしたらいいか、その考え方をお話しください。(なるべく素人の私共にも判りやすくお話しください。)
(答弁を求めます。)
【答弁要旨(建設総務課)】
○ 入札制度については、県のウェブページに情報を掲載するとともに、制度改正時には、記者発表に加え、建設業関係団体に対する説明の機会を通じて、理解を深めていただけるよう努めている。
○ ウェブページでは、地域の安心・安全を支える地元建設業者の受注機会の確保に努めることなど、工事発注に係る考え方をお示しする「発注方針」のほか、工事規模に応じた発注基準、入札参加資格や発注見通し、総合評価落札方式の運用ガイドラインなど、入札契約に係る各種要領等の情報を公表している。
○ また、今年度も6月から低入札対策の強化として、調査基準価格等の算定方法の見直しなどを行ったが、こうした制度改正等について、記者発表とともにウェブページに掲載し、加えて、建設業関係団体にも情報提供のうえ、要請があれば建設業関係団体の会合等で説明を行うなど、入札制度の周知と情報公開に努めている。
○ 今後とも、様々な機会を通じ、入札制度についてご理解をいただけるよう努めていく。
(質問)筒井 タカヤ議員
【指名競争入札】
次に、指名競争入札についてお尋ねします。
これまで2回の建設常任委員会の中で、実績の少ない業者は指名競争入札にて実績・経験を積めるというフレーズはしばしば出て参りました。
日本における建設業の請負入札の制度を顧みますと、明治初頭1889年に一般競争入札を原則とする会計法が制定された後、1900年に明治政府によって勅令が制定され、一般競争の原則の例外として指名競争入札が制度化されました。
実際には、県の工事のほとんどが指名競争入札であったと思いますが1993年にゼネコン疑惑事件やガット・ウルグアイラウンド交渉を契機に全国的に見直しが図られ、現在の様な制度になったと認識しています。
もともと指名競争入札制度にも大きな問題点があると私は考えています。
発注者サイドにおいては、企業選定判断基準の透明性を高めることが最重要であり、また、受注者サイドにおいては、どうしても過去に犯した談合疑惑問題が必ずクローズアップしてくることに、どう正面から受け止め改善できるかであります。
発注者・受注者の双方に難課題点が待ち受けており、この問題を避けて通る分けにはいかないであろうと考えます。
今後このような状況が来るであろうと十分に想定できうることであるからです。
司法の手が、また忙しく動き出すような事態が起きてまいります。
そうすると、やはり「公平・公正であり、一定の競争性があり、技術力による品質の確保を図る」入札制度を現在の入札制度から改善・改革を早期に見出す以外ないと確信します。
また、指名競争入札の要素で大事なのは、発注者から見て良い業者か悪い業者かを判断することと考えます。さきほど総合評価に関して質問した趣旨と同じことですが、努力して技術と経営に優れた企業に育ててきた建設業者に対して適切な評価をしないとしっかりとした企業経営や担い手確保のような発想は出てきません。
そこで質問です。指名競争入札で難しいのは、新規参入の部分です。新規参入を促しながら良い業者を選択することが課題と考えます。
また、指名競争には談合等のデメリットもあると思います。
こうした指名競争入札に係るメリットとデメリットをどのように考えているか、また、それを踏まえて入札方式をどのように改善してきたのか、今一度、説明してください。(答弁を求めます。)
【答弁要旨(建設総務課)】
○ 指名競争入札は、競争参加者が限定されること等のデメリットがあるが、入札参加者の手続の簡素化や手続期間の短縮を図ることができるとともに、地域の安心・安全を支える地元建設業者の確保・育成に効果的な入札方式である。
○ 公共工事に係る入札方式は、地方自治法等でも一般競争入札を原則としているが、平成10年代の半ばまでは、本県でも他県と同様に、指名競争入札を中心に運用していた。
○ こうした中、平成6年のW T O 協定の締結や、官製談合事件等を受け、平成18年に公共調達改革に関する全国知事会の指針が示されたこと等を踏まえ、本県でも平成19年10月から、予定価格が5千万円以上の工事は全て一般競争入札とし、1千万円以上5千万円未満の工事についても2割程度を抽出して一般競争入札を試行することとし、現在は5割程度まで拡大して実施することとしている。
○ なお、指名競争入札の運用にあたっては、工事規模に応じて選定業者数を定めることで競争性を確保しつつ、施工能力や工事成績などを総合的に勘案するとともに、建設業者の受注機会の確保にも配慮しながら選定している。
○ 引き続き、工事の性格や地域の事情に応じて、適切な入札方式の運用に努めていく。
(質問)筒井 タカヤ議員
【価格の評価(低入札対策)】
それでは、今の県当局としてはどの様な競争性をもった入札方式が良いとお考えでしょうか?
まずは「価格」についてです。
低入札対策として、国交省の調査基準価格の設定の見直しを受け、県建設部・農林水産部及び企業庁は、6月1日からの公告、指名通知を行う案件から入札価格基準引き上げを行うと各新聞紙上で公表されていました。
私共の新しい建設委員にも別途に資料をいただきました。
調査基準価格など低入札対策の基本的な仕組みと、今回の制度改正の内容、合わせて、これまでの見直しの経過についても、改めて説明をお願いします。
【答弁要旨(建設総務課)】
○ 低入札対策は、過度な価格競争によるダンピング入札を排除し、工事の品質や労働者の適正な労働条件等を確保するものである。
○ まず、基本的な仕組みは、県が標準歩掛や見積等によって積算した「予定価格」があり、大規模な工事については、工事規模のメリットや技術力を活かしたコスト縮減を見込めるため、予定価格の下に「調査基準価格」と、さらに低い基準額となる「失格判断基準」を設定する。
○ 落札候補者の入札額が「調査基準価格」を下回る場合は、適正な履行が確保できるか調査を行い契約の可否を判断する。
また、「失格判断基準」を下回る場合は、調査を行うまでもなく、適正な履行を確保することが困難と判断し失格となる。
○ 小規模な工事については、工事規模のメリットや企業努力によるコスト縮減に限界があり、低価格の入札では品質の確保が見込めないため、予定価格の下に「最低制限価格」を設定し、これを下回る場合は失格としている。
○ 建設部では、平成8年からW T O 対象工事に低入札価格調査制度を試行し、平成13年度から対象を拡大して本格実施してきた。
それに加え、平成19年10月から、「失格判断基準」や「最低制限価格」を試行し、順次、対象工事を拡大させ、平成23年10月からはすべての工種に拡大するとともに、調査基準価格の算定式の見直しなども行ってきた。
○ 今回の見直しでは、「調査基準価格」や「最低制限価格」を算定するに当たり、受注者や下請業者が適切に社会保険等に加入いただけるよう、労働者に係る費用を含む直接工事費の算入率を、95%から97%に引き上げたところである。
○ こうした算定式の見直しは、これまで6回にわたり行ってきたが、引き続き、工事の適正な品質等が確保されるよう、必要に応じて見直しを行っていく。
(質問)筒井 タカヤ議員
今回の見直しにより直接工事費の比率が95%から97%に引き上げられましたが、さらに価格面については国交省に対し、日本建設業団体連合会において調査基準価格を予定価格92%まで引き上げの陳情等を行っている状況下であり、近い将来ここまで上昇するかも知れない。またこれを期待します。
各自治体は逐次調査基準価格の引き上げを行いましたが、低入価格での施工が可能か判断する低入調査は残しております。
しかしこれはもはや形骸化していると考えます。
なぜならば、県が採用する価格据置型総合評価落札方式では、入札価格について、調査基準価格まで引き上げられて評価値が算定されるため、価格による評価値の上昇が見込めない、即ち受注に結び着く可能性がほとんどないと思います。
調査基準価格以下(但し、失格基準価格以上)の入札額を入れても評価せず、調査基準価格と同一とされ、ただし落札者となった場合においては、調査基準価格以下で入れた価格が契約額となる。
これは大きな矛盾点があると私は考えています。
この点について、県は「契約の申込みをした価格を契約金額とすることが契約の基本原則である」と先の当委員会で回答されています。
その契約金額は、品質に影響を与える、将来的に担い手を確保するに支障が生じるであろうと県当局が主張されているダンピング金額となっているのではないでしょうか?
県側の主張を生かすのであれば、その金額で応札した業者も排除すべきではないでしょうか?そのことについていかがでしょうか。
(答弁を求めます。)
【答弁要旨(建設総務課)】
○ 価格据置型総合評価落札方式の入札については、低入札価格調査制度の対象となるので、適正な履行が確保できるかどうかを調査する「調査基準価格」と、それよりさらに低い算入率で算定し、調査を行うまでもなく失格とする「失格判断基準」が適用されることとなる。
○ 価格面の評価を据え置く「据置価格」は、これを下回る入札をしても、それ以上には高い評価をしないという価格である。
落札候補者が、「調査基準価格」と同額で設定した「据置価格」を下回る入札をした場合は、適正な履行が確保できるか調査を行い契約の可否を判断するので、即、ダンピング入札として排除することにはならない。
○ なお、「失格判断基準」を下回る入札を行った場合には、適正な履行が確保できないと判断し、失格としている。
(質問)筒井 タカヤ議員
次に、今回の調査基準価格の見直しにより、調査基準価格は、愛知県では予定価格の最高90%まで上昇するものと考えます。
隣の三重県でも愛知県と同じ算出基準で改正すると公表しました。しかしさらに上限(90%)を撤廃すると・・・。これにより愛知県と違い、調査基準価格が90%を超えるケースが発生します。
そこで質問です。
当局も国交省の改正に伴い、調査基準の見直しをした訳ですが、三重県と違い、なぜ上限を撤廃しないのでしょうか?
また、そもそも標準歩掛かり・見積り等によって積算された直接工事費に算入率をかけて切り下げることは、品質を確保するうえで問題はないのでしょうか?
これは一種の歩切りには当たらないのでしょうか? (答弁を求めます。)
【答弁要旨(建設総務課)】
○ 本県では、調査基準価格の算定について、国のモデルと同じ算入率を用いており、また、調査基準価格の上限を予定価格の9/10とする運用も国に準拠している。
○ 国のモデルよりも高い算入率を採用している三重県とは状況が異なるが、今回の見直しによって、算定した価格が予定価格の9/10を超え、調査基準価格を予定価格の9/10で設定するものが増えてくることが想定されるので、今後発注する具体の工事案件における入札状況や、国や他県の動向も注視していきたい。
○ 建設部では、標準歩掛や見積等によって適正に見積もった積算額を予定価格としている。
○ 調査基準価格は、適正な品質の確保が見込めるか調査を行うための価格であり、予定価格とは異なる。
従って、調査基準価格等の算定にあたって算入率を掛けることは、いわゆる「歩切り」には当たらない。
(質問)筒井 タカヤ議員
【技術力の評価】
また、当然公共工事の品質確保も大切であります。
そこで次に「技術力」についてお尋ねします。
工事の技術力は、配置する技術者の能力に大きく起因することは確かなことです。
配置予定技術者に対する能力すなわち過去における技術者の施工実績、それに対する能力評価が工事施工上最も重要です。なぜならば、企業の実績で工事を施工できるものではなく、やはり技術者の施工実績すなわち経験値の能力によって工事施工の可否を評価するものであるからです。
しかし、近年は施工能力を伝承できる建設産業の担い手不足が深刻な状況となっていますが、この対策について、県当局のお考えをお示しください。
(答弁を求めます。)
【答弁要旨(建設企画課)】
○ 建設産業は、地域における経済・雇用のみならず、災害時の安全安心の確保に大きな役割を果たしているにもかかわらず、新規入職者の減少や若手労働者の離職、高齢化の進展など、建設業界の担い手不足は相当深刻化している。
○ 建設業は、一般的に休日が少ないと言われており、建設業の担い手確保のためには、休日を確保するなど建設現場の働き方改革の取り組みが必要と考えている。
○ このため、本県においても、平成28年度より、原則土日を休工とする「完全週休2日制工事」の取り組みを開始したところであり、昨年度は県内全域において「18件」の工事を対象として実施し、今年度についても、「23件」の工事で発注者指定により実施予定で、さらに受注者申出による取組も含め、さらなる促進を図っていく。
○ また、労働環境改善を目的として、「誰もが働きやすい現場環境整備工事」について、平成28年度より取り組んでいるところである。
これは「男女別快適トイレ」の設置を必須とし、「現場事務所・休憩所・更衣室・シャワー室、洗面所等」のうちから一つ以上を設置するというもので、初年度は県内全域において「28件」の工事を対象として実施し、今年度は、「70件」程度の工事を対象に実施予定で、こちらについても、さらなる取り組みの促進を図っていく。
○ さらには、建設分野にかかわる若手人材の育成を目的として、行政や建設企業、建設コンサルタントなど、既に建設分野に携わっている技術者と、これから進路を決定する学生との相互理解を深めるための意見交換会を平成25年度から「年4回」程度開催し、建設業のやりがいや魅力の発信に努めている。
(質問)筒井 タカヤ議員
次に工事評点は、現場を施工した監督の結果を評価されたものであります。
現在の県内企業においては、全国規模の建設企業が過去に経営に苦しんだ時期に県内(地場)企業に多くの優秀な技術者が天下って入社し、県内企業の技術の向上へと大いに結び付いていると思う点が数多く見受けます。
建設工事を適正に行わせるという意味でも技術力が最も大切です。
即ち、その配置する技術者が提案する技術提案にて評価を与えるのが最も妥当であります。
技術力の一貫で技術提案すなわち施工計画の内容評価におけるウエイトに比重を置いた総合評価落札方式の大胆な評価点の見直しが今後必要であると考えます。
そこで、お尋ねします。
先の当委員会の席でも述べさせていただきましだが、品質に結び付く技術力を重視するのであれば、技術提案で評価(評価)すれば良いと考えます。
それについて県の見解を求めます。(答弁を求めます。)
【答弁要旨(建設企画課)】
○ 総合評価落札方式は、公共工事の品質確保の観点から、価格と技術力等の両面で、落札者を決定する方式であり、そのうち技術力等については、大きく分けて「技術提案」、「企業の技術力」、「配置予定技術者の能力」、「地域精通度・地域貢献度」を評価項目としている。
○ 総合評価落札方式の形式は、トンネル工事や長大橋梁工事などのように施工規模の大きな工事で、高度な技術提案を求める「標準型」、工事特性に即した簡易な施工計画の提案を求める「簡易型」、技術的な工夫の余地が小さい工事で、技術提案を省略した「特別簡易型」の3つに区分し、工事の規模や要求される技術力に応じて形式を選定している。
○ 「技術提案」の評価については、企業の技術力の育成とともに、公共工事の品質確保に重要な評価項目であるため、技術提案型となる「標準型」と「簡易型」においては、落札者決定において、重視している評価項目である。
○ このため、「技術提案」の評価点は、高度な技術提案を求める「標準型」においては、加算点合計の「最大5
割程度」の割合で配点している。また、「特別簡易型」から技術提案を求める「簡易型」へ、適用する工事の拡大に努めている。
○ しかし、地域における建設産業は、その地域の経済・雇用、ひいては地域の活力を左右する重要な基幹産業であり、また、地元建設業者は災害時の緊急対応等、地域の安全安心の確保に大きな役割を果たしている。
○ こうした状況を鑑み、地元建設業者の育成、健全な発展のため、地域における活動拠点の有無や災害協定などに基づく活動実績の有無など、地域における社会貢献活動も重要な評価項目と考え、「特別簡易型」においては、「技術提案」を求めず、「企業の技術力」、「配置予定技術者の能力」、「地域精通度・地域貢献度」の評価により、施工の適切性・確実性を審査するなど、幅広い業者の参加ができるよう、多様な総合評価落札方式の形式を用意している。
(質問)筒井 タカヤ議員
【入札制度のあり方(総括)】
最後の質問とさせていただきます。
先に述べました、2点即ち(価格と技術者の技術能力・施工計画等の技術提案)によって入札契約制度の中で最も重要なポイントであり公平・公正な競争性であり、そして品質の確保を図ることをずっと述べてまいりました。
企業の評価については、基本的には企業における経営状況の判定により評価を重視すれば良いのではなかろうかともお話をしてまいりました。
改革・改善を早期に正して公平・公正な競争性のある入札制度をつくっていただきたい。
建設業における構造的な改革が大きくスタートし出した最中に、愛知県建設部長に前技監の河野修平氏が就任されました。
新聞(建通等)に掲載(人物紹介)された記事を拝見させて頂いた中で、就任の際に職員にお願いされた「風通しの良い環境をつくること」「アンテナを高くして外の情報を察知すること」「なぜこれをやるか考えること」、また仕事をする上で「人間万事塞翁(さいおう)が馬」という姿勢を貫いて来られたと・・・。
この記事を拝見させていただき、私はある種の共感を覚えました。
これまでお話をしてきた課題を真正面から受け止め、誠意ある改革・改善の取組みを期待します。愛知県における今後の入札制度のあり方について、総括して河野建設部長のお考えをお尋ねします。(以上です。)
【答弁要旨(建設部長)】
○ 公共工事は、経済性や効率性とともに、公平性や透明性を確保することが重要であり、入札制度を考えるうえで、まず、この基本原則を十分に認識する必要があると考えている。
○ そして、公共工事は、県民の皆様の日常生活や経済活動を支えるとともに、災害時にもしっかりと機能し、安全・安心を確保する社会インフラの整備という、県民の皆様にとって大変重要な事業であるので、「技術力」を持った業者に施工してもらうべきだと考えている。
○ では、その「技術力」をどのように評価するかであるが、本県としては、国や他の公共団体と同様に「技術提案能力」に加えて、工事の出来栄えを含めた「実績」も重要な評価の観点と考えている。
○ なお、技術力というものを公平に評価する観点につきましては、引き続き研究してまいりたいと考えている。
○ 入札制度については、必要に応じて適切に改善を行いながら、県民の安全・安心を支える建設産業が健全な経営環境のもと、工事の品質や担い手の確保・育成ができるよう、しっかりと運用していく。