令和元年12月11日
令和元年(12月議会) 県民環境委員会(12月11日)
<議事録>
(質問)筒井タカヤ議員
県立芸術大学の更なる整備の必要性を指摘し、県当局に対しまして具体的な取り組みを求め、以下質問します。
第1回目の東京オリンピックが開催されたのは1964年(昭和39年)でした。愛知県立芸術大学が開校したのは、その「2年後」の(1966年)昭和41年でした。
日本は先の太平洋戦争で焦土となり戦後の復興に向けて日本の国が一致団結して、国土の再建と生活向上に必要になって取り組んでいました。
当時の愛知県には桑原幹根知事という壮大な理想を掲げた人物がおられ、日本を代表する工業基幹産業、自動車、鉄工、化学工業を愛知県内に誘致、商業、農業、道路河川の整備とともに、県民の医療・福祉の施設として県がんセンター及び県コロニーをも実現くださいました。これに愛知県民は諸手を挙げて絶賛をしました。
しかし、まだ貧しさが県民生活もある中、将来を見据え、愛知県民の文化学術・芸術の殿堂としての県立芸術大学を設立するとした桑原知事に対する理解は、社会的な貧しさゆえもあり、当時の多くの愛知県民からは知事の「道楽・趣味」的な傾向だとして批判がありました。
愛知県議会においても広く議論があったようですが、県議会の議員も賛同して、東京芸術大学に次ぐ日本を代表する芸術大学が完成して、これまで数多くの日本を代表する優秀な芸術家を輩出しています。
この県立芸術大学も経年による老朽化で、音楽棟の建替えが完了。また、美術棟も建替え工事が進展しております。
しかしながら、音楽棟、美術棟の施設以外に財政的な問題が原因で、現在も全く整備の計画も一切示されないままの状況で放置されているものが「2か所」あります。1つは、県立芸術大学の「シンボル」となっている講義棟の崩壊寸前の「壁面陶板画」であり、2つ目は、日本中でどこにもないような最低にして劣悪の「グラウンド」であります。
この2つの施設について、改善に向けた取り組みを求め、県当局にお尋ねします。
愛知県立芸術大学の「入学案内」2019-2020。即ち、今年度の学生募集の「案内パンフレット」をここに持っています。(実に、格調高い、品性ある物です。)
表紙の一面に、県立芸術大学の「シンボル」でもある、日本を代表する吉村順三先生の設計による有名な建築との高い評価をいただいている高床式の「講義棟」があり、その横には、こんもりとした大きな樹木。
そこには真っ青な「空」があります。
表紙をめくると、1面、2面(左右のページ)にシンボルである「講義棟」、そこには、大きく「陶板の絵」が堂々と一面・勇壮な陶板画が、「未来を希望」を象徴したような構図が輝いて建物と陶板壁画が一体となっています。
この県立芸術大学そのものの設立趣旨と理念が右のページに、初代学長、上野直昭先生によって記されてありました。
直指天(じきしてん)、文字にすると「真ッ」すぐ「指」「天空」が、直指天(じきしてん)としての文字。
そこに、『この山に入るものに先ず人界を忘れることをすすめる。
人間臭を去ることを求める。仙境の澄んだ空気を吸って、仙人とはなれないにしても、せめて天を仰ぐことを忘れるな。』、このように「文字」が印刷されています。
実に感銘深い意味のあるような創立者の心意気を感じ、ここから輩出される学生たちが、日本を代表して世界に飛躍する祈りすら感じました。
そこで質問です。
先に述べた通り、県立芸術大学の存在を象徴的に表現する、吉村順三先生が設計した講義棟には、大きく輝く陶板壁画が描かれています。
その作家は、故片岡球子さんによる作品です。県立芸術大学の教授でもあられた人物で、有名な画家でもあられ、文化勲章も受章された人物でもあられ、我ら愛知県・県立芸術大学の誇りでもあります。
この偉大な故片岡球子さんの作である県立芸術大学の講義棟の陶板壁画が老朽化により、すでに一部で欠落していることを見て、私は、大変に心を痛め、1人の県民として恥ずかしさすら抱いています。
そこでお尋ねします。
県当局は、今の県立芸術大学の故片岡球子さんの陶板壁画の現状をどのように理解・把握しておられるのか質問いたします。
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(学事振興課長 答弁)
県立芸術大学は昭和41年に開学し、講義棟はその当時から使われている建物で、すでに50年以上が経過しております。
講義棟の南北両面にある陶板壁画は片岡球子教授により、昭和44年頃に描かれたものと見られております。
現状は、南面の壁画は比較的良好な状態ですが、北面は数箇所に剥離が見られます。
(質問)筒井タカヤ議員
次に、この現状を承知しておられるようですが、これまでの補修をなされてこられた経過をお知らせください。
(学事振興課長 答弁)
これまで特段の補修はしておらず、北面については、事故防止のため、壁画直下の周囲を立ち入り禁止にしております。
(質問)筒井タカヤ議員
次に、この作品をどのように評価なされているのかについての所見を求めます。
(学事振興課長 答弁)
芸術大学の案内パンフレットの表紙を飾るにふさわしい、大学のシンボルであり、貴重な作品と理解しております。
(質問)筒井タカヤ議員
次に、愛知県民の誇りでもある片岡球子先生の貴重な作品を維持する必要があるとのお考えがあるとすれば、早急に補修・改修の計画をおつくりになる必要があるかと存じます。
取り組まれるお考えについての所見を求めます。また、この補修、改修にはどれくらいの費用が必要とお考えかを述べてください。
(学事振興課長 答弁)
屋外に設置している限りは、風雨による劣化は避けられないことから、補修方法としては、例えば、陶板を剥がして、屋内で保存するということが考えられます。
なお、その場合には、大学のシンボル的作品であることから、レプリカを作成して設置するという方法も考えられます。
一方で、こうした方法で行う場合、費用については、実際に見積もったわけではありませんが、おそらく両面合わせて億単位の費用がかかるのではないかと思われます。
(質問)筒井タカヤ議員
次に、ここまでの巨額の費用をもってしてまで、改修なさるのか、県当局の率直なお考えを聞かせてください。
放置していた責任にもお話をください。
(学事振興課長 答弁)
率直に申し上げまして、芸大の建物群自体、貴重なモダン建築物として、その維持・管理にもかなりの費用がかかるわけでございまして、議会の御承認、県民の皆様の御理解をいただきながら、改修・保全を進めていく必要があると考えております。
また、壁画をこのままにしておいて、作品の価値を棄損するわけにもまいりませんので、建物を管理する県と、作品を管理する大学法人とで、責任を持って保全してまいる必要があると考えております。
(質問)筒井タカヤ議員
次に、私は、県民の心、県立芸術大学の先生方、学生の心、更にはここを卒業された人々の心の痛みをお伝えし、今一度、県立芸術大学の設立の原点に戻って改修工事くださることを求めます。
(学事振興課長 答弁)
片岡球子先生の大変貴重な作品でありますので、来年度策定予定の芸大施設の長寿命化計画に沿って、改修工事を計画的に進めていく中で、壁画につきましても、必要な措置を講じる工夫をしてまいりたいと考えております。
(質問)筒井タカヤ議員
次に、この県立芸術大学でも最悪の施設「グランド」について改修を求め、以下改善に向けて質問してまいります。
私が現場に出向いた限りの「グランド」の状況をお伝えします。
もともと、県立芸術大学の設立の時から「グランド」の考え方が低かったように思えます。
グランドの位置は、大学施設から離れた位置にあり、利用については、ずいぶん(下り坂)を歩き、元の現状は、低湿地を基本的に改善せずに地ならし程度でもって「グランド」としたように思えます。
グランド面の雨水の排水施設は万全でありません。
隣接地には愛知用水路もあり、排水の工事は慎重な配慮が必要です。
今でも雨天後のグランド利用は実に不自由であると思えます。
又、グランドの「形状」も、長方形でもなく、実に使い勝手が悪く、陸上競技・サッカー・ラグビー等の正規な面積ですら確保が出来ません。
よって、一般の学生が課外活動のスポーツと言われるサークル活動にも不向きです。
基本的な形状変更も含めたものが必要と考えます。
更に、グランドの一角に、かつては「テニスコート」があったであろうと思える、テニスのネットを支える「柱」がボロボロにサビて放置。
勿論、テニスのコートなるものがあったであろう面はボコボコの穴。なんだか実に悲しいものと覚えました。
質問です。私が指摘したグランドの現状を県当局はどのように知っておられるのかをお話しください。
又、県立芸術大学のグランドとしておられるであろうが、大学としてどのように、今、利用されているかについてもお話しください。
(学事振興課長 答弁)
芸大のグラウンドは、校舎群の一番奥に位置する「一ノ池」と「二ノ池」の間にあり、土地自体は愛知県公立大学法人のものとなっております。
利用状況は、体育の授業で使用するほか、部活動では、サッカー部、ラグビー部、野球部が使用しております。
また、今年度は、11月の大学祭でのサッカーOB戦でも利用されました。
ただし、現状は、雑草が生えており、公式行事等に使用できるような環境にはございません。
(質問)筒井タカヤ議員
県立大学と県立芸術大学の「グランド」を比較して、学生「本位」で考えるとしたらどうあるべきかの所見を求めます。
芸術大学だから、こんなでいいんだとお考えでしょうか。
芸術大学の学長はどのように考えているのか、お尋ねします。
また、東京芸術大学の「グランド」と比較した所見を求めます。
(学事振興課長 答弁)
グラウンドは大学に必要な教育施設であり、その利用主体が学生であることは十分に承知しております。
県立芸大の学長からは、常に良好な状態に維持していきたいところではあるが、予算に限りがあることから、授業や部活動での利用状況を勘案しながら、整備方法を検討していきたい旨、伺っております。
また、東京芸大に尋ねたところでは、グラウンドは校舎に囲まれた「中庭」に位置し、体育の授業は主に体育館で行っているとのことでありまして、単純には比較できない状況となっておりますので、御了承願います。
(質問)筒井タカヤ議員
東京芸術大学と並び評価をいただいている愛知県立芸術大学のグランドとして恥しさを私は感じます。県当局の所見を求めます。
(学事振興課長 答弁)
今後、大学・法人と相談しながら、グラウンドの整備や維持管理の方策について検討してまいりたいと考えております。
(質問)筒井タカヤ議員
私はここに、県立芸術大学のグランドの「大改修」を求めます。計画を立案され、「完成時期」を定めた取り組みを求めます。県当局の所見を求めます。
(学事振興課長 答弁)
現時点では、施設の長寿命化計画の策定が義務づけられていることから、まずは、こちらに注力してまいりたいと考えております。
その後、グラウンドにつきましても、学生や教員から改修の要望がありましたら、県としても、きちんと相談にのって対応してまいりたいと考えております。
(質問)筒井タカヤ議員
財政が厳しいだけに、簡単ではないとは思いますが、あなた方が取り組むことをせずに前進はできません。今一度答弁を求めます。
(学事振興課長 答弁)
池と池の間にあるグラウンドで、水はけが悪く、すぐ雑草が生えるなど、大改修には多額の費用を要するものと思われますので、当面は、学生にとって、より使い勝手が良くなるように、少しずつでも改善されていくことが望ましいと考えております。
(質問)筒井タカヤ議員
私の知る限りでは、県当局が、形状の変更、排水を含めた建設をしてくれたら、芝生の「グランド」作りに協力をしても良いとの声が、民間のスポーツ団体でもある愛知県のラグビークラブがPFI事業でもって支援しても良いとの声もあります。
そこには、大学が正規利用するのを除けば、このグランドを利用させていただきたいとの内容も含まれています。
そこに、グランドと「維持・管理」も支えというものです。
私は、これも、検討に値する内容でもあるかと考えます。県当局の所見を求めます。
(学事振興課長 答弁)
民間へのグランドの貸出しにつきましては、グラウンドの近くに駐車場がないこと、進入路は、学生も通行する道路となっていますが、道幅が狭く、歩道と車道が分かれていないことなど、アクセス面で、一般の利用には適していないと大学・法人から聞いております。
いずれにしましても、グラウンドの整備方法につきましては、いろいろな方法があるかと存じますが、大学の設置基準に合った形で、どのような工夫ができるのかは、今後、大学・法人と検討していく必要があるものと考えております。
(質問)筒井タカヤ議員
これまで県立芸術大学の改善と提案を含め、お尋ねしました。
総括して「県民文化局長」の所見を求めます。
(県民文化局長 答弁)
これまで、県立芸術大学に関して、皆様からは、50年を経過した施設の古さや使い勝手の悪さ、機能不足を指摘されてきたところであり、県としましては、学生に安全で快適な学習環境を届けることを第一に、施設の新設・改修に努めてまいりました。
本日、委員からは、講義棟の陶板壁画の保全やグラウンドの改修といった、新たな視点からの御指摘をいただき、大変ありがたく思っております。
少子化が一層進む中にあっても、芸術大学では、2022年度から美術学部にメディア映像専攻を新設していくなど、新たな令和の時代にふさわしい教育を進めてまいる所存でありますので、引き続き、御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
以上です。